勢い余る

勢い余る




岩ちゃんは堅物だ。バレー馬鹿でだけどその実男前で、俺なんかより人望は厚い。いや、俺に人望があるかないかはおいといて。

「岩ちゃん、またため息ついてる」

「うるせーくそ川」

「ひどっ! 岩ちゃんひどい」

そんな岩ちゃんが最近ため息を頻繁に漏らすのは、何を隠そう恋をしているからだ。岩ちゃんのクラスメイト、霜月ミオちゃんは、俺から見てもかわいくて気が利く、とにかく男から見たら魅力的な女の子だ。まあ、同性からも人気はあるけど。

「ねえ、そんなに悩むなら告白すれば?」

「だから、お前はそうやって面白がるなよ」

「いやいや、面白がってないし。あ、そうだ、俺がミオちゃんを呼び出したげる」

「は?」

部活に身が入らないのは俺が困るのだ。
彼女はたしか吹奏楽部だと聞いた。俺は吹奏楽部の女友達に電話をし、部活終わりにミオちゃんに体育館に来てもらうように頼んだ。
岩ちゃんが俺をにらんでいたけど、気づかないふりをした。



そうしていざ部活が終わると、俺は岩ちゃんを体育館に残して部室へ歩く。ふりをした。
実際は体育館の入り口から二人の様子を覗き見している。

「岩泉くん、用ってなに?」

「あー。あの。えーと」

見ているこっちがはらはらする。岩ちゃんはいつもとは違い歯切れの悪い返事をしていた。
ミオちゃんは怪訝そうに首をかしげた。

そこでようやく岩ちゃんは意を決したらしく、上ずった声で言うのだった。

「俺と結婚してください!」

「え?」

「あっ、ちが」

おいおい岩ちゃん、落ち着け。俺がフォローに入ろうとしたときだった。
目をしばたたかせていたミオちゃんが、仄かに笑った。

「……はい。幸せにしてください」

なんなんだろうかこの二人は。見ているこっちが恥ずかしくなって、俺はそっと体育館から離れていた。



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三周年企画。
岩泉くんが勢い余ってプロポーズ。
企画参加ありがとうございました!


170430