迷子
迷子
俺は西谷さんと田中さんと影山と一緒に東京観光に来た。そう、一緒に来たはずだった。
「迷った……」
どこもかしこも同じような景色、俺はこの歳で盛大に迷子になっていた。
電話も繋がらず一人立ち尽くしていた時だった。
「あ、あの……」
「ふぁっ!?」
聞こえた声に振り返れば、女の子がいた。
「もしかして、迷子……ですか?」
「え? あ、はい!」
ビシッと背筋が延びた。可愛らしいその子になぜだか緊張した。
「……誰かと、一緒ですか……?」
「あっ、はい。先輩とっ……」
声が裏返る。俺の目の前にいる少女があまりにも可愛らしいからだ。
でも、彼女も緊張しているらしく顔を真っ赤にしていた。
「ここじゃ……待ち合わせの目印ないので……案内します。えーと、」
「日向! 俺、日向翔陽!」
「私は霜月。霜月ミオです」
小さく笑うミオさんに、俺も笑い返した。
「ミオさんって、東京の人ですか?」
「うん、高校生で……バレー部のマネージャーをやってます」
「えっ! 俺もバレー部です!」
にか、と笑えば偶然ですね、なんて彼女も笑う。
「で、うちのセッターすごいんです! 俺の手にボールが来るんです!」
「そうなんですか? 日向さんはレギュラー……? 実は私の彼がセッターなんですけど、彼もすごいんですよ?」
ふわりと笑った彼女に胸がドキドキした。可愛らしいと思った。
「あっ、俺は日向でいいよ!」
「うん。日向。私はミオでいいよ。敬語も無しで、ね?」
「じゃあ……ミオ、ちゃん!」
名前を呼べば彼女はまた柔らかく笑った。
いつのまにか俺とミオちゃんは話し込んでいく。
ミオちゃんの彼氏さんもすごいセッターらしく、話に花が咲いていた。
「びゅーってきてさ!」
「うん、ふわってくるのもある」
「そう! で、ボールが手に当たった時の快感がさ」
「うん、お兄ちゃんが言ってた!」
そうしているうちに田中さんと西谷さんと影山がが現れて、俺はミオちゃんと別れることになった。
「またな、ミオちゃん。春高で」
「うん、春高でね!」
大きく手を振りながら別れた。
また会えたらな、なんて思いながら。
この時の俺はまだ知らなかった。彼女と再び会う日が早々に来ることを。
そして夏の東京遠征合宿の日が来る。
――――――――
千明さまリクエストです。
東京にきた日向くんが田中くん西谷くんとはぐれるお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
160404