そうして恋をする

そうして恋をする



私はちょっと面倒な性格をしている。それがことさら現れるのは恋愛においてだ。

白鳥沢に入学した私は、バレー部のマネージャーに志願した。はじめは何となくだった。
別段バレーが好きだったわけでも詳しいわけでもなく、ただなんとなく入部した。

それでも今、私はバレーに夢中だった。いや、正確には"彼"に夢中なのだ。

「お疲れ、ミオ」

「……」

私に話しかけてきたのは瀬見先輩だ。彼は面倒見がよく私たち後輩を名前で呼ぶ。
私が夢中なのは、この彼、瀬見さんに他ならない。
だけれど私の性格は面倒だから、なかなか素直に接することができないのだ。

「牛島さん、天童さん、お疲れさまです!」

瀬見さんに話しかけられても返事ができない。ごまかすように別の先輩にタオルやドリンクを渡しても、瀬見さんは嫌な顔ひとつしないのだ。
それが少しだけ、悔しかった。



そうして私たちはある予選で敗退した。
三年生はもう引退してしまう。
予選敗退後、学校にかえって百本サーブをした。
みんな泣きつかれて、部室にこもっていたけど、私と瀬見さんだけはまだ体育館にいた。

「ミオ、あとは頼んだ」

「瀬見さん……」

瀬見さんはその日もいつも通り私に接してきて、だけど私の目からは涙がこぼれていた。悔しさと寂しさ。

「なっ、何で泣くんだよ」

「だって私、私、」

「あーもう。怒るなよ?」

「えっ?」

泣き出した私を、瀬見さんが抱き締める。ずるい、こんなの、ずるい。

瀬見さんは世話焼きだから、だからきっと私じゃなくても女の子が泣いたらこうして抱き締めるに違いない。

私なんか、瀬見さんの眼中にないのだ。

思ったら怒りで涙は止まっていて、私は瀬見さんを突き放した。

「ミオ?」

「瀬見さんなんか、大っ嫌い。引退してもう顔を会わせることがなくなって清々します」

嘘。
心にもない言葉は、私の胸を締め付けた。でもそれよりも、瀬見さんの悲しげな顔が私を締め付ける。

ごめん、嘘だよ。本当はあなたが大好きで大好きで仕方がないんだ。

「そっか。まあ、嫌われついでに言うけど」

瀬見さんは仄かに笑いながら言う。

「俺、ミオが好きだったんだわ」

それだけ、一言それだけ言って、瀬見さんは私に背を向ける。
待って、違う。私も、私だって――

「瀬見さんっ!」

私は瀬見さんを後ろから抱き締めた。背が高いし体も大きくて、私の腕には収まらなかった。

「私も、瀬見さん、好きですっ」

「え?」

くる、と瀬見さんが振り返り、私を見下ろした。私は瀬見さんを見上げる。今さら怖くなって涙が目にたまる。

「ミオ、それは慰めかなにかなのか?」

「ばか。慰めで好きなんて言うように見えますか?」

「だってお前、俺にはそっけないし冷たいし」

「そ、それは照れ隠しというか」

つまりは私は瀬見さんが大好きすぎて、この気持ちをもて余していたのだ。
好きだ、こんなにも。

「ははっ、夢みてえ」

それでも瀬見さんは、今度は嬉しそうに笑うと、私をそっと抱き締めた。

「離さないからな」

ああ、本当にあなたには敵わない。
そんな風に笑われたら、何を言われたってかっこよく見えてしまう。

私は彼は、そうして恋をする。



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三周年企画。
瀬見くんとすれ違いからのハッピーエンド。
企画参加ありがとうございました!


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