君の詩
君の詩
詩を書くのが好きだ。
今まで何冊のノートに詩を書き綴っただろうか。
最近はもっぱら、あの人への思いばかりだけれど。
「あれ?」
いつものように、家に帰って詩のノートを鞄から出そうとしたが、見つからない。落としたのだろうか。
「……どうしよう」
あれを読まれたらと思うといてもたってもいられなかったけど、夜も遅かったから仕方なくその日は家で落ち着かない時間を過ごした。
ノートを拾った。名前がなかったから、中をちらっと読んだけど、どうやら詩人のノートらしい。可愛らしい切ない想いが溢れた詩だ。
「た、武田先生……すみません……」
「え? ああ、どうしました?」
朝の職員室に現れたその子は、僕が持っていたノートを見て顔を赤らめた。ああ、このノートに詩をしたためたのは彼女だったか。
「このノート、あなたのですか? 素敵な詩ですね」
「あ、はい。私のです……ありがとうございます」
彼女にノートを渡せば、彼女は小さく頭を下げる。
「本当にそのひとのことが好きなんですね」
「え? あ、はい」
これが僕と、霜月さんの始まりの日。
その日以来、霜月さんと色々な話をするようになった。
彼女の好きな人のはなし、詩のはなし。
彼女は高校最後の年といううこともあり、毎日が充実しているように見えた。
とても楽しい時間に、いつの間にか僕は彼女に惹かれていたことに気づかなかった。いや、気づいていたはずだ。
だけど霜月さんには好きな人がいたし、第一僕と彼女は教師と生徒だ。
恋をするなど、あってはならないことなのだ。
卒業式の日、私は思いきって武田先生に詩のノートを渡した。
「先生が好きでした。先生と出会えて、先生と過ごせて、先生を好きになれて幸せでした」
「霜月、さん……」
ノートを受け取った先生は、笑ってくれなかった。
さようなら、私の恋。さようなら、私のうた。
霜月さんが卒業して、一月近くたつ。
校庭の桜が咲き始めていた。
霜月さんからもらったノートの詩は、どれも愛しさが溢れていてあたたかくて、優しい。
「元気にしてるかな……」
桜を見ながら呟く。
霜月さんは僕を好きだったと言ってくれた。あのときは動揺してなにも言えなかった。
……言ってはダメだったのだ。僕と彼女は教師と生徒で、年齢だって一回りも違う。
「っ、!」
最後の詩を読み終えていてもたってもいられなくなり、彼女の家へと走っていた。
「武田先生?」
一月しか会ってなかっただけ。だけどもっと長くに感じた。君はまた、大人になっていた。
「霜月さん、僕は、僕。霜月さんが好きです」
「え……?」
目を見開いた彼女の瞳に写る自分。何て情けない顔だろう。
「先生、ほんと?」
「はい。だから、付き合ってくれませんか?」
今さらだって断られると思っていた。だけど霜月さんは僕に抱きつき鼻声で言う。
「私、今が一番幸せです」
桜の香りを乗せた風が僕らをつつむ。
来年も再来年も、君と共に時を過ごしたいと願った。
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優希さまリクエストです。
武田先生と生徒のお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
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