変なやつ

変なやつ




嘴平伊之助。彼はいつも変な猪の頭を被っている。それから、乱暴で粗暴で怖くて、あまりいい印象がなかった。最初のうちは。

「おい##NAME1##タロウ」

「私の名前は##NAME1##だよ。##NAME1##タロウって何」

「どうでもいいんだよ、名前なんて。夕飯、あれがいい」

「あれって?」

「昨日のあれだよ!」

言葉は流暢で難しい言葉も知っているはずなのに、時々こんな子供じみた会話になるのはきっと彼が山育ちだからだ。

「ああ、天ぷら好きだもんね、伊之助は」

「そうだ、俺は山の王だからな」

「山の王は今関係ないでしょう」

「うるせえよ、##NAME1##タロウの癖に!」

炭治郎と善逸と伊之助と私。同期四人で旅をするようになって、一番変わったのは伊之助だと思う。いい意味で人間らしくなった。
今まで彼は山で暮らしていたと聞く。

「なあ、##NAME1##」

「わ。なに?」

ちゃんと名前を呼ばれたかと思ったら、伊之助は私の太股に頭を乗せて寝転がった。いつも被っている猪の頭を外して。
藤の家紋の家でのつかの間の休息。伊之助はいつも私に天ぷらを作れと頼み、そしてこうして太股に寝転がるようになっていた。なつかれているのかもしれない。

「何でだろうな」

「何が?」

「お前の太股に寝ると心臓がぎゅってなる。お前のにおいを嗅ぐと頭がほわほわする」

「……何でだろうね」

なつかれている、というよりは、もしかしたら好かれているのかもしれない。だけれどそれに気づいているのはきっと、私だけだ。伊之助はきっとその感情を理解していない。もとより、ようやく炭治郎たちとの関わりで人間らしくなった伊之助には、まだまだこの感情を理解するのは早すぎるのだ。

「お前ってほんとに変なやつ」

違うよ。変なのは伊之助の方。だってそんなに穏やかに笑っているんだから。



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もざきさまリクエストです。
伊之助のお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



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