好きって何?

(「変なやつ」続き)



好きって何?



唐突に、本当になんの脈絡もなく伊之助が言った。

「好きってなんだ?」

どうやら伊之助は、炭治郎に匙を投げられた質問を私にしてきたらしく、猪頭越しに私をじっと見てきている。炭治郎が答えられないものは大概私に回ってくるが、今回の質問には少しだけ戸惑ってしまう。うまい例えが見つからなかった。

「なんだ、##NAME1##タロウにもわかんねえのか」

「あっ、えー。あれだ、伊之助は天ぷらが好きでしょう?」

「ああ、あの衣の?」

「そう。何て言うか……何度も食べたいって思うのは、天ぷらが好きだからだよ」

食べ物以外に例えるものが見つからなかった。伊之助が聞きたい"好き"の意味は、恐らく人間に向けての感情のことだ。

「それなら権八郎も同じことを言ってたぜ。だが俺が知りたいのは、俺がお前を好きだと思っている理由だ」

「へ? 伊之助が私を好き?」

「ああ。権八郎が言ってた。俺は##NAME1##タロウが好きなんだろうって」

少しだけ炭治郎を恨む。何てことを言ってくれたんだ!
炭治郎は伊之助が私を好きだと思っているようだが、私は断じてそれを否定する。そもそも伊之助が私を好きなわけがない。

「可笑しいよな。お前は食いもんじゃねえし」

「そ、そうだよね。炭治郎ったらなに言ってるんだろうね」

「だけどお前もさっき権八郎と同じこと言っただろうが」

「うっ……」

天ぷらを例えに使ったのはまずかった。

「なあ」

「うわっ?」

ぎゅん、と顔を近づけてきた伊之助は、猪頭を取ると何を思ったのか私の頬をがぶりと噛んだ。
え、痛い。なに、なんで?

「ほら、お前は食えねえし、二度と食いたいとも思わねえ」

「あ、そういうこと」

「だけど、##NAME1##タロウ」

伊之助は猪頭を外したまま、綺麗な緑の瞳で私をじっと見ている。何だろう、今度は何をされるのだろう。妙に身構えれば、

「お前の太股には何度も寝転がりてえって思うから、きっと俺はお前の太股が"好き"なんだな」

「えっ?」

にっこりと、嬉しそうに笑う。年相応の無邪気な笑顔だ。
普段伊之助は猪頭を被っているから表情がわからない。わからないだけに、たまにこうして伊之助の表情を見ると、私はどきどきしてしまう。

伊之助はずっと山育ちだったから、人の気持ちに疎いと思っていた。だけど、私も大概自分の気持ちに疎いのだと、まざまざと気づかされた瞬間だった。



――――――――
もざきさまリクエストです。
伊之助で、「変なやつ」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



170902