雷に恋をする
雷に恋をする
刹那の出来事だった。
村の外れに現れた化物が私に襲いかかろうとしたとき、雷のような速さでその人が現れ、化物を切ったのだ。
「ん、あれ? て、ぎゃー!」
そして、自分で切り落とした化物の頸を見て叫び声を上げたのだった。
金色の髪のひどく優しそうな顔の彼は、震えながらも私の方に近づいてくる。
「あ、貴方は?」
「俺? 我妻善逸」
「え、と……」
「怪我、してる」
震えながらも私に近づいてくるのは私の怪我を心配していたからだった。怯えたり叫んだり心配したりと忙しい人だ。ころころと変わる表情も、まるで雷のようだ。
「ちょっと我慢してね」
「え、……!」
断りを入れたあと、彼は私の傷に薬を塗り、慣れた様子で包帯を巻いてくれた。不思議なことに、薬を塗られると直ぐに痛みが引いていく。
「痛かったよね、怖かったよね。俺も怖かった」
「あ、の。貴方は何者なんですか?」
「俺? うーん、一応鬼殺隊になるのかな……いやでも俺は弱いからなあ」
我妻さんはぶつぶつと悩みだし、その様子に私の緊張や恐怖は消えていて、何故だか笑いまで漏れていた。
「何がおかしいの?」
「いえ。我妻さん、助けてくれたお礼に、ご飯食べていきませんか?」
「いいの!? わー、何か分からないけどそこまで言うなら食べようかなあ」
本当、見ていて飽きない人だと思った。
鬼殺隊というのは、鬼を狩る人たちのことで、鬼というのは、先程私が襲われた化物のことだ。それから我妻さんは自分がその鬼を倒した記憶がないらしい。
「ああ、美味しい美味しい。##NAME1##ちゃんはいいお嫁さんになるよ! ふふ、俺今本当に幸せ」
それから、とてもお調子者。でもきっと、根は真面目。じゃなかったら、あんなに震えながら鬼に対峙しない。私を助けるために鬼の前に出たりしない。
「我妻さんは格好いいですね」
「ええっ、そ、そう? 女の子にそんなこと言われたのは初めてだよ」
「そうなんですか? みんな見る目がないんですよ」
「##NAME1##ちゃんっ、俺と結婚しようっ?」
どういう流れでそうなったのだろうか。
「あっ、ごめん。ほら俺、鬼殺隊やってるからさ。明日死ぬかも知れないし」
「ああ、そういうこと。……いいですよ。結婚」
「えっ?」
我妻さんは驚き顔を真っ赤にして固まった。自分の方から結婚しようって言ったのに、私の返事が予想外だったようだ。
「ありがとう、##NAME1##ちゃん。でも俺、やっぱり結婚できない、かな」
「何で?」
「うん……俺、鬼を倒さなきゃいけないから。それがじいちゃんとの約束だから」
「……うん」
知ってる。分かっていた。
我妻さんは本当は責任感が強いこと。それに、自分が気づいていないだけでとても強いことも。
我妻さんは優しい人だ。本当に、信じられないくらいに。
「それじゃあ、鬼殺隊の責務を全うしたら、また私の所に帰ってきてね。待ってるから」
雷に恋をした私は、もしかしたら生涯彼と結ばれることはないのかもしれない。
それでも私は、再び彼に会える日を願って、彼に目一杯の笑顔を向けた。
170608