気持ち

気持ち



正義感が強い人だ。
それが彼への第一印象。不適な笑みと底知れぬ強さ。彼は一見完璧で、その強さは折り紙つきなのだ。

「煉獄さん、も、無理」

「何を言う? 修行はまだ始まったばかりだぞ!」

折り紙つきの強さは、だが私のような初心者にはただただ理解しがたいだけだ。

継子。

それが今の私の立場で、それは柱である煉獄さんに直々に育ててもらっていることを意味する。だが正直に言えば、煉獄さん以外の柱の継子に成りたかった。煉獄さんはお世辞にも教え方が上手いとは言えない。感覚的すぎるそれは時々、いや。常々私の頭を悩ませる。

「はあ、は……煉獄さん、休みたい」

「まだまだ。さあ、掛かってこい」

剣の手合わせとなるとその底のない体力に付き合わされるのは並大抵のものではないのだ。
なぜ私がこの人の継子に選ばれたのか。

「はー。疲れた」

「うむ。風呂にでも入ってくるといい」

旅をしながら修行をしている私たちは、同じ部屋で寝たりもする。仮にも男と女なのに。
それでも私がその点を悩んだりしないのは、煉獄さんが女に興味がないからだ。これは私の憶測にすぎないが、煉獄さんは女の人と結婚するという人並みの幸せよりも、鬼殺隊としての誇りの方が比重が重いようなのだ。故に、私と二人きりになったとて、私たちが色のある会話を交わしたことはない。

「##NAME1##、湯加減はどうだった?」

「はい。いいお湯でしたよ」

風呂上がりだって、そんな会話くらいしかしないし、風呂に入っている間だって、時々煉獄さんが外から話しかけてくることもある。

私たちは、そんな関係。柱と継子、ただそれだけ。

「煉獄さん?」

「ああ、##NAME1##。もし俺が死んだら、君はどうする?」

「死ぬ? 煉獄さんが? あり得ません」

「まあな。もしもの話だ」

いつも通りの夕飯時、煉獄さんは珍しく変な話題を切り出した。煉獄さんが死んだら、か。そりゃあ、悲しむ。もしかしたら、敵を打つために一層剣に励むかもしれない。

「俺は、君が死んだらあとを追うかもな」

「え?」

そんなの、煉獄さんらしくない。なんの冗談だろうか。いや、煉獄さんが冗談を言ったところは見たことがないが。この言葉の意図はなんだろうか。

「それだけ君を大切に思っているということだ」

「私も、煉獄さんは大切ですよ?」

「む……そうだな。だがきっと、君の思う大切と、俺が思う大切は、意味が違うぞ」

「どういう風に?」

「こういう風に」

にっかり笑う。
そして立ち上がったかと思ったら、煉獄さんの体が私の方に近づいてきて、食卓越しに額に唇が触れていた。

何が、何を……。

このとき私は初めて煉獄さんの気持ちを知った。



170608