苦手
苦手
兄弟弟子。彼と私の関係だ。
その年は例年より選抜の生き残りが少なかったと聞く。なにしろそのうちの二人が私と冨岡くんだったから、私たちはどうやらただならぬ縁があるのだと思ったのだった。
育手の所にいた頃ですら私たちは会話が少なかったのだが、同期になってからは益々会話は少なくなった。とはいえ、私たちは同期ゆえに共に旅をする機会が少なくなかったのだが。
なぜ私たちに会話が少ないのかと言えば、それは冨岡くんの性格にある。彼は多くを語らず無駄口を嫌い、さらには表情も乏しいために、会話が続かないのだ。初めこそこちらから折に触れて会話のきっかけを提供していたのだが、彼の性格を熟知してからは無駄な努力はやめたのだった。
「次、東京だね」
「ああ……」
本日も冨岡くんと二人の旅に、私は気の向くままに話しかけていた。冨岡くんは先程から「ああ」以外の答えを言わなかった。が、そんなもの私には慣れたもので、相も変わらず独り言に似た冨岡くんとの会話を続けていた。
「冨岡くん、また階級上がったんだってね」
「ああ」
「何だか悔しいな」
快晴の空から降り注ぐ陽の光を体一杯に浴びるように両手を広げて空を扇いだ。あったかな太陽を鬼は嫌う。昼間の間だけは鬼のことを忘れられる。
「お前は」
「なに?」
「お前は全く強くならないな」
「言い方酷い!」
珍しく「ああ」以外の言葉を吐き出したかと思ったら、辛辣な言葉。まあこれも冨岡くんらしいといえばらしいのだが。
噂で聞いたが、冨岡くんは鬼殺隊の中で嫌われているらしい。分からなくはない、冨岡くんの性格はかなり癖がある。誤解を生みやすいのだ。
「まあ、それでも私は冨岡くんが好きだけどね」
「……? 俺はお前が苦手だ」
冨岡くんは嫌われるのを気にするのに、私に好かれることは苦手らしい。私だって最初は冨岡くんが苦手だったよ。でも今は――
「そ。私の気持ちは変わらないけどね」
170608