悶絶
悶絶
可愛らしいと言ったら失礼に当たるし、尚且つ彼は普段以上に無口になるだろうが、それでも彼を表すならば、私は間違いなく可愛いという言葉を選ぶ。
「冨岡くん、冨岡くん。今日は一緒にご飯食べよう?」
「断る」
「ええっ、即断! でもさ、冨岡くん」
「……」
「今日は鮭大根を作ってみたんだよなあ。残念残念」
「…………食う」
「えっ? 聞こえなーい」
「食うと! 言ったのだ!」
ふふ。やっぱり可愛い。
柱のしのぶさんと私は仲が良くて、そんなしのぶさんから聞いた情報によれば、冨岡くんは鮭大根が好物なのだそう。確かに鮭大根は美味しいと思うよ。でもね、あの冨岡くんの頬が緩むほど美味しいものなのかは私にはわからない。それから、私の作った鮭大根が冨岡くんのお口に合うのかもわからない。
「美味しい? ねえ、美味しい?」
「煩い黙れまだ食べてない」
「はーい」
口をきゅっと結んでじっと冨岡くんを見る。箸が鮭をほぐして、それが冨岡くんの口に入っていく。あ、口開けた無防備な冨岡くんも可愛いな。
「……」
「不味かった?」
だけど冨岡くんの頬は緩んでくれなくて、多分私の鮭大根じゃ力不足なんだと肩を落とした。が。
「……美味い」
美味い、そう動いた口を見ていた私は、つまり冨岡くんの顔も見ていたわけなのだが、その冨岡くんの顔がゆるっゆるになっていたことに気づき、思わず顔をそらしてしまった。
ああ、可愛すぎる。
冨岡義勇は、本当に可愛い。
170609