その4


学校を出て約10分。 芽衣子の自宅まであと半分といったところ。
2人の間に会話はなく、ただひたすら黙々と歩き続けている。

「芽衣子!」

先に沈黙を破ったのは勘右衛門で、突然芽衣子の頬っぺたを軽くつねる。

「ひぁ!?かんひゃんらにふんの」

「だってずっと怖い顔してるから」

何かあったのかとドングリ眼が心配そうに覗き込む。何と言っていいのか分からず、芽衣子は あうあう とどもるだけ。

「よし!声に出して整理しよう」

スッキリするかもよ?と勘右衛門に促されるままに話し出した。

幸村にマネージャーに誘われ始めてから今日日、ずっと揺れていた。だが自分は頼りないが一応部活の部長なのだ。本来の役目を放っておいて他の部活なんて出来ない。でもテニス部が叶わなかった3連覇を目指して頑張っていることも知っているし、自分で役に立つのなら協力したい。

………でもだからといって。

「イジメられたくないです!!」

「………へ?」

ドングリ眼が見開いた。

「だってコワイじゃん。私泣くよ。もうね、とーこーきょひだよ」

ジェスチャーで震える真似をする少女を見て勘右衛門は思わずツッコミを入れた。

学校一のマスコットをイジメる人はいませんよ。
何気にキミは人気者です。

「ちょっ……芽衣子さ〜ん。雷蔵さんが言いたかったのはそんなことじゃなくてですね……」

「知ってるしちゃんとわかってるよ」

一瞬風が止み静寂が訪れる。勘右衛門の目の前に立つ少女の顔は夕日の逆光でよく見えない。

芽衣子は震える口で

「でもまだ怖いの」

と呟いた。

みんなに心配かけてるね、と呟く少女は悲しげだった。
平穏のままでいたい自分と変わりたい自分。きっと今でも揺れているのだろう。

「勘ちゃん、答え出るまで待っててくれる?」

「俺たちはいくらでも待つさ」

「ありがと」

小さくふにゃりと笑う少女を見て、彼女が答えを出すのはもう少し先だろうと勘右衛門は思った。

2人は手を繋いで歩き出した。

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