その3


その後の芽衣子は別人のようだった。

少女漫画の主人公のようなミスをひたすら繰り返した。塩と砂糖を取り違え、水の分量を間違え、水を2リットルも多く入れる。

要するに素人同然のミスを大量生産した。

1つミスする度に芽衣子はひたすら謝る。

「あぁ〜……入れすぎた…」

「どっぷり入ったのだ」

「うう〜へいすけごめん」

申し訳なさそうに兵助に謝る。次は隣のテーブルから八左ヱ門が叫ぶ。

「生クリームが塩辛いぞ!?」

「あうー!うっかり塩いれちゃった…」

「ははっ。塩分摂りすぎで高血圧だな」

菜箸で芽衣子を指しながら三郎がからかう。

「んぅ…笑うな三郎」

早くサラダを盛り付けなさいと睨むが、三郎はニヤリと笑うと輪切りのキュウリを持ち上げた。キュウリは見事に全部繋がっていた。

最早素人以下のミスに愕然とする。

「………芽衣子この生クリームもらっていい?」

今まで黙ってデミグラスソースをひたすらかき混ぜていた勘右衛門が口を開いた。いつもヘラヘラしているのに今はとてつもなく真剣な眼差しで塩入り生クリームを見つめている。

「……別にいいけど、勘ちゃんそれどうするの」

塩辛い生クリームなんてとてもじゃないが使えない。だからといってゴミ箱ポイは勿体ない。

「え?テニス部の丸井か切原あたりに差し入れ?」

「絶対だめ!!」

全力で芽衣子に止められ、結局塩入り生クリームはポイされる運命になった。


その後も芽衣子は皿を落とすは、スープはぶちまけるは散々な結果を残した。
度重なる醜態に見かねた兵助は。

「今日は帰ったほうがいいのだ」

「いや、でも…ハンバーグが」

「今日の芽衣子は変だよ」

尚言い繕う芽衣子を雷蔵が遮る。

「形は出来てるから続きは明日やろ。勘右衛門、芽衣子を送ってあげて」

「いいよ〜。んじゃ帰ろっか」

まだ何か言いたげな芽衣子を余所に、勘右衛門はテキパキと2人分の帰り支度を済ませる。
そして未だに
"んぅ―" "あぅ〜"
と唸る彼女の襟首を掴んで帰っていった。

帰り際に

「後で話聞かせろよな」

と雷蔵に言い残して。

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