その1
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少女、諸泉 芽衣子は、自他共に認める、平均・平凡・平穏の完璧なる3平女だ。
テストをやらせれば、採ってくるのは平均点。
見た目容姿は平凡な十人並み。
運動も並大抵で、頑張ればそこそこできるレベルな上に、その性格も平穏で穏和。
何より身長は平均を大きく下回るというなんとも悲しい3平女。
長期休みの度にオール3の通信簿を、がっくりうなだれながら持ち帰る姿は、どこか哀愁が漂っていたというのは有名な話である。
だがしかし、身長145cmの小柄さと、そのもともとの性格から、クラスの癒し系マスコットとして、人気を博しているというのは、事実であり、3平もそう捨てたものではない。
これ、つい最近気づいた。
季節は4月の春。
そんな芽衣子も現在は立海中学3年生。
「やった。オール3でも無事進級」
掲示板に張り出されたクラス表の前で、感動に浸っていた。
「クラスークラスーどこ〜??」
ピョンコピョンコと、跳ねながら探すが、見つからない。
それもそのはず、芽衣子の前には、黒山の人だかりができていて、背の低い芽衣子には、到底見えない。
「んぅーーうー!……くっそぅ!」
悔しげに地団駄を踏んでみる。
踏んだところで何かが変わるわけでもなし。
そこは、諦めて人がいなくなるまで待とう、あっさり芽衣子の中で自己完結した。
「これじゃあ見えないよぅ」
石ころを一つ蹴飛ばした。
「諸泉〜」
間の抜けた声。
男テニ準レギュラーの高里くん(15)。自称芽衣子の雇い主。
得意技の壁打ちという、意味の分からない技を引っさげて、準レギュラーになった変わり者。
「あ、高里くん。クラス見た?」
「見た見た。諸泉も俺と同じ3−Dだ」
人ゴミを掻き分ける手前が省けた。グッジョブ高里くん。
「高里くんありがと」
「いーって。いつも世話になってるし」
別に金で雇われていただけであって、特に何かした覚えはない。
「何かしたっけ?」
考え込む芽衣子を余所に、高里は爽やかスマイルで。
「諸泉。一緒に行こうぜ」
「………?」
半ば芽衣子を引きずる形で2人は教室に向かった。