邂逅 砌

尾浜 勘右衛門




彼らが忍術学園に来て早ひと月が経とうとするが、一向に帰る気配を見せない。
俺たちが、5年生に進級した春に現れた、彼らの世話役の任を命じられたのは、同じは組の月城 蛍ちゃん。
彼女のことを知ったのは、3年の“房中術”の授業。12歳の割に妙に色香のある蛍に忍たまの誰もが魅了されたのは言うまでもないが、同時にくのたまに嫌われる原因にもなってしまった。
蛍は忍たまの中では、その存在感が薄れがち、というより、儚い印象が見受けられる少女。
3年どころか、4年になっても房中術の授業以外、会話は勿論、顔をあわすことすら叶わなかった。
だから彼女をちゃんと知ったのは、5年生になってから。
本当につい最近のこと。
彼女のことをもっと知りたい。もっと仲良くなりたい。もっと触りたい。ぎゅっと抱きしめたい。
そう想っていたのに 

「ほんっと邪魔だな」
 

「何が?勘ちゃん」
「兵助。あれだよ」

指差す先にいるのは彼等。
ツンツン頭とワカメみたいなやつ。

「たっく、あの月城って奴マジムカつくぜ!」

「だな。全っ然ゆーずーきかねぇし!」

「そう何ですか?」

「なら私たちから月城さんにキツく説教しますわ」

「そうしてくれると助かる」

「こっちも練習しないと身体が鈍るからね」

くのたまの申し出に、黒帽子とヘアバンドが礼を言っているのが見える。
確か…黒帽子が真田でもう片方は幸村って言ったっけ?

こっちの視線に気付いたのか、話し掛けられた。

「おーい!あんたらあの女と同級生だろ?」

「あの女……」

あ、俺抑えられる自信ない。蛍よく我慢出来るよ。

「月城だ。その色月城と同じ5年だろ」

蛍の世話になってるくせに。
恩を恩と思わない、恩恵が無償で受けられると思っている傲慢さ。俺たちは彼等を“天神様”とは認めない。
全くもって、反吐が出る。何も学ぼうとしない彼等にも、彼女のことを目の敵にするくのたまにも、当然、彼女に何もしてあげられない自分にもね。

「蛍は尽力しているよ」

俺たちはそれだけ言い残し、教室に戻った。後ろで何か騒いでいるけど、聞こえないフリ。
机に座ると、滲み出る殺気を感じ、隣を見ると、兵助が射殺さんばかりに外を睨んでいる。

「兵助殺気出し過ぎ」

「だって勘ちゃん、このままじゃ蛍ちゃん取られる」

「蛍ならこっち戻るって」

「今すぐ殺してしまおう」

「まだ駄目。蛍が縋ってくるまで」

兵助もい組の割に案外短気だね。殺してしまっては、蛍が責任を取らされてしまうし、何よりしっちゃかめっちゃかにされたまま死なれたら、面白くないね。

「勘ちゃん、性格ワルすぎ」

「今更でしょ」

「殺気も出し過ぎ。俺のこと言えないのだ」

「それも今更でしょ」

彼等の登場によりくのたまは堕ち、学園の機能は低下の一途を辿ってはいるが、彼等には感謝もしているんだ

。だって…彼等のおかげで蛍と仲良くなれたのだから。



「あの……尾浜くん。少し相談に乗ってもらってもいい…かな」

噂をしているとほら、蛍がいつもの不安げな顔を浮かべてい組の教室に入ってきた。本当、小動物みたい。

「いいよ…蛍おいで」

俺の手招きに嬉しそうに寄ってくる蛍、きっと今の俺はワルい顔をしているに違いない。

《勘ちゃん…ほんっとに性格ワルすぎ!》

兵助の矢羽音が飛んできた。
だから今更だって。


蛍は俺たちのモノだ




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