天女 降立

鉢屋 三郎
この学園はよくトラブルに見舞われるが、今回は今までの事件とは明らかに異質で、天神様と呼ばれる手塚たちが来た時点で薄々と感づいてはいた。
この俺、鉢屋 三郎の脳が警鐘を鳴らす。
“気をつけろ” と
最初は漠然としたイヤな予感に気分が悪かったが、それは朝に確信することになる。
「なぁ聞いたか。校庭に天女様が舞い降りたんだと」
同じ組のハチが頬を赤らめて、興奮気味に話した内容に頭を抱えたのは記憶に新しい。
「何だハチ。惚れたか?」
「ちげーって。俺は蛍一筋だって。それより見に行こうぜ」
どうだかと思ったが、ハチに誘われるまま、校庭に足を運んだ。途中で出くわした雷蔵たちを連れて、たまたま通りすがった蛍を引きずって。
校庭に着くと、天女様に抱きついて喜ぶ手塚たちと、それを遠巻きに、冷めた目で見ている忍たまたち。
(なかなか、混沌としてるな)
天女の名前は宮下 愛子というらしく、手塚たちと同じ…らしい。
「国光。それに周助たちも。ここって」
「とりあえず落ち着け。ここは忍術学園といって、俺たちは今ここで保護してもらっている。もう大丈夫だ」
「フフッ 愛子もここにいるといいよ」
何言ってんだ。てか、何勝手に決めてんだ。
そう思ったが手塚たちの行動は、俺が思っていた以上に早く、学園長先生に直談判に行った。
まぁ、直談判したところで、これ以上厄介事は増やさないだろう。
俺たち忍たまはそう思っていた。
「……ふむ」
「愛子は俺たちの大事な仲間なんです」
「愛子先輩はいつも俺たちを支えてくれたんす」
「なるほどのぅ…」
なにやら考え込む学園長先生。頼むから許可しないでくれ。
「よし!許可する!!」
あ、終わった。
《おい!どういうことだ》
《何考えてんだろね》
《これ以上面倒を増やすなよ》
《豆腐の糧にしてくれる》
《久々知くん、そんなの食べらんないよ》
兵助は意味分からんが、押し寄せる友人たちの矢羽音に相槌をうちながら成り行きを見守る。
「世話は引き続き五年は組の月城 蛍に一任する」
隣に座る蛍は真っ青な顔をしていた。……同情する。
「あなたが蛍ちゃん?これからよろしくね」
「……は…はぁ」
いきなりの名前呼び。宮下さんは蛍の両手を握って笑顔で握手。
対する蛍は、無表情…というより、俺たちにしかわからないだけで、かなり嫌そうにしている。
「では宮下さん」
「愛子でいいわよ。私たち友達でしょ」
「ははは…。お部屋に案内します。ついて来てください」
「はーい」
宮下さんをスルーした蛍は出て行った。
「よし!俺たちも行くのだ!」
予測不能な兵助に引っ張られ俺たちもついて行った。
宮下さんにあてがわれた部屋は、元・物置。といっても普段から掃除をきちんとしているから、きれいな普通の部屋だ。
「この部屋を使ってください。では、この学園でのことについて説明……」
「愛子っこの俺様が来てやったぜ!!」
あー、何か面倒臭いのがきた。
「あっ景吾。あなたもここにトリップしたのね」
「ああそうだ。俺様が来たからには安心しな」
「ぁありが…とう」
「クソクソ跡部!いいトコもっていきやがって」
「しゃーないで、岳人。相手は跡部や」
「にしても愛子、よく無事だったな」
「ぅ…うん、ちょっと…ね……。夜に話すね」
「愛子先輩…」
ちっ蛍の説明聞けっての。完全に蚊帳の外かよ。
《本当に何考えてんだろね》
突然雷蔵が矢羽音を送って来た。
雷蔵…笑っている。雷蔵様が笑っておられる。
気づけば他の3人は安全地帯に避難済み。
あれ…?俺、雷蔵様に捧げる生け贄ですか?
《三郎…少しいい?》
《ららら雷蔵。冷静に…》
雷蔵に肩を掴まれ、ミシリと音がして、気の早い俺の脳が走馬灯を見始めた。
蛍よ。葬式は盛大に頼む。
お前ら、何俺を見殺してんだ!
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