神 密談

宮下 愛子
 




あたしがトリップしたのは子どもの頃好きだったアニメ、忍たま乱太郎の世界。バラバラに飛ばされた国光たちともそこで再会した。
興奮の冷めないまま、あれよあれよとあたしも一緒に憧れの忍術学園に住めるようになった。全部国光やリョーマたち、そして友達になった蛍ちゃんのおかげ。すごく感謝してる。

蛍ちゃんは初めてあたしにできた、唯一の女の子のお友達。面倒見もよくて優しい蛍ちゃんは、あたしに相応しいとっても良い子で、もっともっと仲良くなりたいな。
…あれ、こんな子、忍たまにいたかな?
うーん、まあいっか!
なるべく早く私たちの世界に帰らないと、全国大会に間に合わなくなっちゃうよ。
でも、あの人にもこの世界の人には関わるなって言われてるしなー。
どうしょう…今夜国光たちに相談してみよっかな。



「その神様は何て言ってたんだい」

精一が切り出した。
再会した日の夜に、あたしたちは一番広い精一たち立海の部屋に集まってる。
各校の、つまりは青学・氷帝・立海・四天の部長とあたしで、これまでのことと今後のことについて話し合うために。

「神様…あたしはジンって呼んでるけど、ジンはあたしたちが飛ばされたのは事故だって」

「事故、それじゃ」

「原因はわからないって」

原因不明の時空の歪み。一度歪んだ時空は、ジンにも直すのに時間がかかる。
その間、憧れ忍たまの世界を堪能しとけ。だけどあまり人と関わるな。世界を壊すな。俺とはスマホでいつでも連絡とれるようにしてある。
そう言ってあたしは送り出された。

「チッ ふざけやがって」

全く景吾の言うとおりだわ。この先あたしたちはどうなるの。放り出された見知らない世界で、不安だけに支配され、あたしたちは黙ってしまった。大人びて見えるけど、あたしたちはまだまだ子どもで、やりたいことだってたくさんある。

「テニス…やりたいね」

「そうだな」

国光の顔が曇る。国光だけじゃない。精一や景吾、白石くんだってそうだ。

だってみんな今年の全国に賭けてる。それが痛いほどに伝わってくるよ。何かあたしにできることってないかな。みんなにはいつでも思う存分テニスをさせてあげたい。

(そうだ…蛍ちゃん)

「あたし、蛍ちゃんに頼んでみる」

「宮下さんそれは危険過ぎやで」

「え、何で」

「月城さんら、人を殺しとるらしいんや」

白石くんの言うことはあたしにとって、とてもじゃないけど信じられるものじゃなかった。あの大人しい蛍ちゃんや、いつも元気よくて優しい忍たまたちが殺しだなんて。
そんなの駄目、絶対駄目。止めなくちゃ。どんな理由があったとしても、人殺しなんてしちゃいけないんだ。

「あたし、みんなを説得する!」

「だが宮下」

「みんなちゃんと話せば分かってくれるわ」

「何かあったらすぐに俺に言うんだよ」

「幸村くん“俺たち”やで」

「チッ俺たちも連中を牽制しとくか」

「そのほうがよさそうだな」

話し合いは深夜まで続き、内容は明日の朝一番で各校の部長から部員に伝わった。

あたしは明日から頑張って蛍ちゃんたちを説得しなくちゃね。



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