インソムニアに雨が降った。
どんよりと重たらしい雲が厚く上空を覆っている。
雨の影響なのか足が痛む。
杖を用いてしか歩けない姿はなんとも愚かで見窄らしいことだ。
亡き妻アウライアがこんな姿を見たら何というだろう。
不甲斐ない私を見て叱咤するだろうか、娘と息子の使命に涙を流すだろうか、世界を…恨むだろうか。
なまえは年々アウライアに似てきている。美しい見た目も、頭の回転が早いところも、少し天真爛漫すぎるところも。
なまえの柔らかい雰囲気は人を惹きつけ日の光のように暖かい笑顔は多くの人を癒し、世界から愛されているのだと感じる。
違うのは髪の色と私譲りの頑固さだろうか。
小さい頃から物事の本質を読む力に長けており、善も悪もまとめて受け入れて全て昇華させていた。
魔力はクリスタルの影響かノクティスや私よりも高く、力は男と比べてしまえば劣るがそれを差し引いても魔力でカバーできる高い戦闘力を持っている。
高校と掛け持ちしてインソムニアのカフェでアルバイトを始め、アルバイトを続けながら大学で社会学を熱心に学び、卒業してからは王都で外交を行ったり私の助手として事務的な仕事をやっていたが、とうとう明日、弟ノクティスがテネブラエの神凪ルナフレーナの婚儀でオルティシエに向かうのと共に旅立つ。
真の王になるということ、クリスタルの守護者になるということ、
それはすなわち個人の消滅でありその身を世界に捧げるということである。
2人を愛す父親として未来の為に死んで欲しいなどと言えるはずがなかった、しかしそれは王としては決定的に不当。
クレイラスは友としてまた同じ父として私を励ましたがクリスタルに選ばれた以上、必然的な未来を教え、備えさせることが必要であった。
帝国との戦争の最中なら、なおさら。
自分かわいさにそれを先延ばしにして遠ざけてしまったことは私の最大の罪かもしれない。
自分にもっと力があれば使命を代わることが出来たのだろうか。
なまえには娘としてただ1人の女として幸せになって欲しかった。
ノクティスには立派な王になり私の意思を継いで国を長く導いて欲しかった。
あまりの無力さに辟易する。なにが王か、愛する家族を1人も守れず、国を国民を犠牲にする事でしか存続出来ない世界は果たして平和と言えるのか。
何故クリスタルは、私の子を選んだのか。
考え出せばきりがない。
今日の天気のように厚い雲が私の上を覆っていた。
このままではいけないと気持ちを切りかえるため部屋を出た。
食事に行く途中の窓辺の廊下にずらりとてるてる坊主がさがっている。
よく見ればてるてる坊主の顔は私やノクティス、クレイラスやコル、グラディオにイグニス、ドラットーに王の剣の顔まである。
そのなんとも言えない絶妙な表情のてるてる坊主達に思わずふっと笑みがこぼれる。
こんないじらしいことをするのはなまえに違いなかった。
時はいつのまにか過ぎて、
あんなに小さかった娘や息子は大きく立派に成長した。
私が守らなくとも、支えなくても歩いていける、自ら受け止められる。
信じよう。私とアウライアが愛した子たちを、私達の未来を。
旅立ちの朝、空は晴れて澄んだ空気が先を照らしていた。