ノクトがルナフレーナ様と結婚する為にオルティシエに行くことになった。
政略結婚らしいけど、ノクトもルナフレーナ様も昔から親交があって、なんか、一石二鳥くらいの話らしい。
正直羨ましい。ふとあの手紙が纏う柔らかい春の花の香りを思い出した。
あと、そう、ノクトのお姉さんのなまえさん。なまえさんも一緒に旅に出てルナフレーナ様のお兄さんと結婚するらしい。
難しいことはよくわからないけど、オルティシエまでの道に俺も同行するんだ。
唯一の一般市民として。
他に行くのは王さまを守る王の盾グラディオラスと、軍師でノクトのお世話係のイグニス。
この2人とはノクトの家でお泊まり会を何度もした仲だし、なんなら昨日もみんなでノクトの家を片付けたし、気兼ねないけどなまえさんいるとちょーっと緊張しちゃうなーなんて思ったりもしている。
でもノクトやなまえさんが結婚前にいい思い出になったなって思えるような旅にしたい。
もちろんその為にカメラもしっかりお手入れしたし!
いざという時、俺も2人を守れるように訓練した!
それに王都の外なんて滅多に行かないからチョー楽しみ!!
道中で俺に彼女とか出来ちゃったりして!!!
「ほんと、ないわ」
レガリアと名のついた高級車をノクトとぶいぶい言わせながらついついそんなことを考えていたら。
案の定エンジンが徐々に鈍い音を立てはじめ、とうとう動かなくなった。
つまり最初の目的地ハンマーヘッドまで車を手で押す羽目になったのだ。
この事実を受け止めきれずに地面に座り込んでいるノクトは心底怠そうに呟いた。
「ないよな?えぇ?ノクティス王子」
「調子に乗りすぎたな」
そこに容赦ないグラディオと冷静なイグニスからの射撃。
「しょうがないでしょー!?」
旅は始まったばかり。
しかしスタートからなんとも不安な旅だ。暑いし。
「まぁまぁ…これも良い思い出ってことで。」
澄んだ柔らかい声が聞こえる。なまえさんだ。
運転席にイグニス、なまえさんは助手席に座っていた。
黒い革のショートブーツに黒いスキニーデニム、インナーと薄い7部袖ジャケットももちろんルシスブラックで、ゆるゆると巻かれた漆黒の艶髪から覗くシルバーの曲線を描いたピアスだけがアクセントになっていて俺から見たらなまえさんてすごくオトナですごくオシャレって感じ。でもなまえさんはこう見えてすごくノリが良かったりおっちょこちょいだったりするし、いつもなまえさんがふにゃって笑うと自然とつられて周りの雰囲気がふにゃっと柔らかくなるんだよなぁ、不思議。
初めての時も見た目と中身のギャップにちょっと驚いたっけ。
しかし世界地図で見るとあんなに近いのに、実際は結構歩かないとつかない。こんなのもいつか思い返したらなまえさんの言うようにいい思い出になるのかもしれない。
けど…
「ハンマーヘッドまだー?!!」
「まだ距離はあるぜ」
びしりと外に詳しいであろうグラディオが言い放った。
「世界広いな…」
「ほんと…」
「実感出来るな」
俺の嘆きをよそにノクトはしみじみと外の世界へ思いを馳せ、そこになまえさんが共感して、その2人にイグニスが同調した。
グラディオ曰くイグニスはなまえさんに頭が上がらないらしい。
はぁ…と大きく溜息をついた。
砂埃が風とともに舞う。
「この実感やでしょ…」
それから運転席のメンバーを変えつつ、きちんと車を押してるか押してないかで一悶着ありつつ、なんとか1時間くらいかけて最初の目的地ハンマーヘッドへ到着したのだった。
「おーい、待ってたよ!…えっと、どれが王子?」
迎えてくれたのは、すごく、ホットな女の子。シドニーっていうらしい。くしゅくしゅのショートヘアにハリツヤの良い健康的な小麦色の肌と、有難きヘソ出しルック。そして短いホットパンツから覗く長い足。うん、これは素晴らしいね、俺外に出てよかったようん。
シドニーの声に、ノクトはレガリアの影からゆっくりと立ちあがった。
シドニーはまずなまえさんに、そしてノクトに結婚おめでとうとそれぞれ祝いの言葉をかけてから車をぐるりと見てまわった。
どうやら彼女の目から見てもレガリアはなかなかに難しい状態らしく、うーんと顎に手を当てて悩む姿もカワイイ、なんて。
すると隣にシドというシドニーのちょっと怖そうでファンキーなお爺さんがきてノクトを上から下まで値踏みするように見回した。
「フン、親父の威厳をそっくり拭き取ったような顔だな」
「は?」
よくわからないけどシドはノクトのお父さんを、つまりレギス陛下を知っているようだった。
ノクトは眉を寄せて目の前のシドを軽く睨みつけた。
「色々控えた大事な旅なんだろ、もっと締まった顔出来ねぇもんかね」
嫌味ったらしく溜息混じりにノクトに宣うと今度は隣に立つなまえさんを先程と同じように上から下まで見た。
「お前さんは…アウライアにそっくりだな…」
どこか少し苦しそうに言うシドは俺が思ったよりもレギス陛下と近しい人なのかもしれない。
アウライアっていうのはノクトとなまえさんのお母さんで、ノクトが小さい時に亡くなっているって前に聞いたことがある。詳しいことは知らないけど。
お母さんに似てるって言われたなまえさんは一瞬ぽかんと驚いた顔をしていたけどシドと話そうと一歩足を進めた。そんななまえさんを避けるように車に沿って一周回ったシドは、舞い上がった砂埃がついた車を大事そうに撫でた。
「こいつはすぐには出来ねぇぞ。中に運んだら適当に遊んでな」
ノクトはなんとなく怒ってるぽかったしなまえさんはシドとレギス陛下との関係を気にしているようだったけどとりあえず言葉通りにレガリアを車庫に運び入れ、まずはご飯を食べようとみんなで隣接しているレストランへ向かった。
Let's make a happy trip
(幸せな旅にしよう)