水曜日
危険物だ、ある意味で

「山崎さん山崎さん!」
「なんだろうか」
「これ、着てみて下さい!」
「これは…?」
「この世界の服です!」
「俺の服。さすがにこの世界でもその服っていうわけにもいかないし」

和樹に持ってきてもらった服を手に取って、不思議そうに彼はそれを眺める。
見た感じ和樹とそんなに背格好が変わらなさそうだったから、無理矢理頼んでもらってきて正解だったかもしれない。
とりあえず着方を教えて、部屋を出た。

「ところでさ、和樹くん」
「なんだよ」
「一昨日はまだいいとして、どうして君は昨日も私の家に泊まったんだい?」
「それはお前、あれだよ、心配だからだよ」
「あ…私のことは心配しなくて大丈夫!ちゃんと生きてるから!」

そうじゃなくて、と和樹は言った。
一体何が言いたいんだ、こいつは。

「俺が心配してるのはな…」
「あ、もしかして私が襲われないかとか!?大丈夫!山崎さんはそんな不届きな輩じゃないから!!」
「いやむしろその逆だよ」
「えっ」
「なんだよ」
「まさか和樹…そんな趣味があったなんて…」
「は?」
「山崎さんは渡さないぞ!!彼は私が全力で守り抜いてやる!!」
「お前ってどこまでアホなの!?」

相変わらずこいつは私の言葉に無駄にキレのあるつっこみを仕掛けてくる。
うん、さすがだ。

「え、違うの?」
「お前さ、自分の胸に手を当ててよく考えろよ?」
「和樹君それはセクハラです」
「ほんと自分に都合いいことばっか言うよな…」

呆れたオーラ全開で、和樹はため息をついた。

「お前、どうせ俺がいなかったら絶対変態の極みに辿り着いてただろ」
「なんだ、そういうことか」
「やけに納得が早いな」
「だって私もう既に変態だし」
「ああ…うん、そうだな…」

あれ、和樹の目がなんか遠い。
どうしたんだろう。
そのとき、山崎さんが着替えていた部屋のドアが開くのが見えた。

「あ、着れました?どうです…か…」

やばい。

「着心地は?俺とあんまり背変わんないから大丈夫かと思ったんだけど」
「ああ、少し窮屈な気もするが、ぴったりなようだ。ありがとう」

これは、やばい。

「なら良かった。どうした?なまえ」
「みょうじさん?」

二人が私を見てくる。
いや、そんなことより。
私服の山崎さんはさすがにやばい。
だって、かっこよすぎる。
いや、もともとかっこいいんだけど。
似合いすぎてるよ、この人。
もうあれだ、危険物だこの人。
こんなにかっこよすぎるのは危険だって。
爆発しちゃうよ?私の頭が。
もう頭が混乱しすぎて訳分からん。

「あの……」

何と言っていいのやら分からない。
あれ、なんか意識が朦朧とする。
なんでだろ。
たぶんあれだな、イケメンすぎて気が持たないんだ。
くらっと世界が揺れて倒れそうになるところを、誰かに支えられるのを感じた。
和樹かと思って視線を上げると、視界いっぱいに広がる思いがけない光景。

「大丈夫か?みょうじさん」

すぐ傍で聞こえる彼の声。
ああ、もうだめだ。