あるサラリーマンの話

 人生何が起こるかわからない。これは俺が異世界トリップとやらをして思ったことだ。

 彼女無し、唯一の趣味が料理しかない、ただのしがないサラリーマンの俺がある日帰宅途中に突然異世界に来てしまったなんで誰が想像できるだろうか。
 そりゃあ、俺だって信じられなかったし精神はかなりやられた。異世界トリップって、小説ではだいたい優しい人に拾われて〜とか、魔法がいっぱい使えて〜とかだと思う。
 でも俺は違った。汚いスラム街に気づいたら居たんだ。
 呆然としてたら、でかくてゴツい男達に囲まれて殴られて輪姦された挙句、時計やら金目のものを取られた。財布の中身ははっきり言ってここのお金ではないから取られても意味ないんだけど。
 もう肛門は痛いし、精液でぐちゃぐちゃでひどい状態だったが、何とか比較的安全そうなとこに移動した。
 震えはずっと止まらなくて、たぶん発熱してた。それでも誰も助けてくれなかった。この街にいる奴はみんな自分のことで精一杯だったんだ、仕方ない…なんてその時の俺は思えるわけもなく、襲ってきた男達を呪う勢いで恨んだ。
 2日くらいそこでじっとしていたけど、空腹と疲労で俺は意識が朦朧していた。
 そんな時、1人の男が声をかけてきた。

「ーーお前、まだここに居たのかよ」
「……っ、?」
「きったねぇな…貴族様がこーんな姿になってるなんて笑えるぜ」

 そう俺を嘲笑する男を見て、息が詰まった。
 俺を輪姦した連中の1人だったからだ。
 睨みつければ男は楽しそうに笑って、無理やり立たされた。

「はな、せ…っ!」
「そんな生意気な口聞いてるとここでブチ犯すぞ、ああ?」
「…っ」

 俺を抱えて、男ずんずん歩いていく。疲労やら何やらで体を動かせない俺は唇に血を滲ませ、ただ悔しさに震えていた。
 連れていかれた場所はスラム街から出た場所にある、小綺麗なアパート。汚いからと男に風呂に入れられて、ベッドに放り投げられ俺はまた犯された。
 気持ち悪いし辛すぎて嘔吐した俺を男は興奮した目で見ていた。

 地獄のようなセックスが終わりぐったりしていれば、男は家を出て行った。指先でさえ動かすのが辛い俺はただ白い天井を見つめるだけだった。
 しばらくして帰ってきた男に、サンドイッチの様なものを食べさせられた。

「…不味い、何だこれ」
「文句言うなよ、食べさせてやってんだからよ」

 腹も減っていたし、ペロリと平らげることはできたが、そのサンドイッチはあまり美味しくなかった。バケットはパサパサだし、肉の味付けが濃すぎて前の世界でいた俺には理解できない味だった。でもボリュームは凄くて、それだけで腹が充分膨れた。
 それからまた男…カイルに抱かれて、不味い飯食わされて、寝て、抱かれてのエンドレスだった。嫌でもセックスには慣れたし、歩けるまで回復してきた。

「あんた、ホモなのか?」
「ホモ?」
「その…男色なのかって聞いてんだよ」
「別に、どっちでもいけるだけ」

 女の方がいいだけで男もいける、そう言ったカイルに俺はピシリと固まった。
 話を聞けばこの世界はあまりそう言うことに偏見はないらしく、バイが多いらしい。何で俺がこんな目に…見た目も綺麗じゃない、ただの男なのに。

「最初にヤッたときに気に入ったんだよ。顔は普通だけどな」

 聞けば、カイルはそう言った。
 俺がカイルだったら、絶対俺なんか無理だけどな、そう言い返せばセックスだけはいいとかどうとか言われてまた抱かれた。解せない。

 カイルに対しては嫌いだが、面倒を一応見てもらっているから逆らえない。金がない家出した貴族だと俺は思われているらしい。どうでもいいし、訂正はしていない。
 正直早く出て行きたいが、生憎金なんてないから無理だった。
 セックスに関しては、カイルによって無理やり開かれたアナルは快感を拾うようになったし、フェラやらなんやらも平気でできるようになった。
 カイルが美形だったからからまだできたんだ。慣れって怖い。前の世界の俺からしたら考えられないことだ。

 カイルの仕事は何か知らないが、昼間出かけて夜に帰って来る。俺は暇だったし、何より連日の不味い料理に嫌気が指して居たから駄目元で、昼間買い物に行かせてほしいと頼んだ。
 予想に反して、カイルは多いくらいの金をくれた。…だいぶ怪しそうな顔をしていたが。

 次の日カイルに連れられ、市場に向かった。大量に食材が売ってあって、見てみれば、見慣れない食材もあるがだいたい前の世界と同じだった。
 お金の仕組みを覚えながら、買い物をした。そんな大変ではなくてすぐ覚えることができた。

 カイルは仕事に向かい、俺は家に帰り早速食材を調理していった。久しぶりの料理は楽しくて、簡単な煮込みハンバーグ、オニオンスープ、シーザーサラダを作った。主食は市場には米もあったけど、金が足りなくて買えなくて、結局安いパサパサのパン。

 夜にカイルが帰宅して、テーブルに並ぶ料理にびっくりしていた。
 カイルは恐る恐るハンバーグを口にしてから、一瞬固まるとバクバクびっくりする勢いで食っていた。カイルは全て平らげると、暫く放心していた。

「おい、ハジメ…このクソ美味い料理は何だよ」
「何って…ハンバーグとオニオンスープとサラダだけど」
「ハンバーグ、オニオン…聞いたことねぇ」
「俺の故郷では定番料理の一つだけどな」
「よし、お前明日から飯作れよわかったな」

 別に嫌じゃない俺は頷くと、何故か興奮したカイルにベッドに放り込まれてまた抱かれてた。解せない。
 それから毎日お金をもらって料理を作って、気が向いたら部屋の掃除やら家政婦よろしく家事をしていた。
 お金は余ったものはこっそり貯金して、ここを出ていくためにいろいろ準備をするようになった。


 それから2ヶ月くらいして、俺は置き手紙を置いて家を出た。


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