ガレスの優しさ

「あの男とはどういう関係だ?」

 カイルが帰ってから、玄関でボーッとしているとガレスさんがそう聞いてきた。

「カイルは客です」
「…仕事は何をしているか知っているのか」
「宝石商…だと聞いてますが」

 なるほどな、ガレスさんはそう言って、皺の寄った眉間を揉んだ。

「あの男とは何があったのかは知らないが、もう関わらない方がいい」
「………」
「ハジメにはいい影響はないだろう…何より危険だ」

 ガレスさんはカイルの何かを知っているのだろうか。真剣な表情で忠告する姿を見てそう思った。
 そっと抱きしめられ、顔を見つめられる。

「あの男だけじゃない。ここも危険だ、引っ越した方がいい」
「引っ越し?」
「私が家を用意してやろう。王都の近くにいい家を見つけたのだ」
「ちょ、ちょっと待ってください」

 いきなり話された内容に頭がついていかない。

「確かに危ないけど、俺は引っ越すつもりはないです」
「いや、これからもっと危険になる可能性がある。私でも常にお前を守れる訳ではないからな」
「ま、守るって…」

 鼻先が触れ合うほどの距離で見つめられる。綺麗な顔に胸がドキドキしてしまう。

「私はお前を気に入っている…心配しているんだ。何かあってからでは遅い、わかってくれるな?」
「そ、んなこと言われても困ります。引っ越しとかいずれはしようと思ってますけど、ガレスさんに頼る気はありません」
「ハジメ…」

 全て頼るなんてことはしたくない。自分でお金を貯めて、自分でやれることをしていきたい。女みたいなことをしていても、男に頼るなんてありえない。
 きっぱり断り、自分の想いを伝えた。

「でも、ガレスさんの気持ちは嬉しいです。ありがとうございます」
「…気が変わればいつでも言ってほしい。私だけしか巡回はしていないからな。何かあってからでは遅い」
「巡回って…ガレスさんだけでしてるんですか?」

 頷くガレスさんに目を見開いた。
 何人かで見回りをしているのだと、そう思っていた。聞けば、ずっと1人でスラムを巡回しているらしい。

「私がもっと昇格すれば、ここも警備地域に追加するつもりだ。いつまでもこのままとはいかない、誰かが変えなければならない」
「ガレスさん…」

 ちょっとかっこいい、なんて思ってしまう。だって、いつも傲慢で庶民を見下してる癖に、その庶民…スラムの住民のことも考えているなんて。
 この発言もだが、さっきからなんだか優しいガレスさんに戸惑ってしまう。

「最近、ハジメに元気がないのがあの男のせいだと思うと…腹がたつな」
「ガレス、さん」
「寝室に向かおう」

 強引に腕を引かれた。
 本当にガレスさんはどうしたんだろうか。いつもは何かしら嫌味を言ってきたりするのに今日は何も言ってこない。むしろ俺を気遣っている。

 戸惑いを隠せないまま、ベッドに押し倒された。


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