似ている男

「はぁ…」

 町の朝市で買った食材を抱えながら、俺は何度目かのため息を吐いていた。


 次の日の朝、特に気まずい空気にもならずシャムスに別れを告げ、俺はアネストンから帰国した。
 酔っていたとはいえ、年下になんてことしてしまったんだと汽車の中で頭を抱えた。
 ーーでも、シャムス本人は艶々していたから気にしなくていいのかもしれない…いや、よくないか…よくないな、うん。
 帰ってからこんな調子で自己嫌悪に陥っていた。来年には30になるのに、こんなことをやらかすなんて本当に情けない。

 そんな考え事をしていたのが悪かったのか、俺は人にぶつかった。

「っ、すいませ…ん」
「おー、気ぃつけろよ」

 慌てて謝り、男を見上げる。その顔を見た瞬間ピシリと固まった。

「…ザブール?」
「あ?」

 男はザブールそっくりな顔をしていた。体格も肌の色もそのままで、違うところは坊主頭なところだけだ。もしかしてイメチェンでもしたのだろうか。
 困惑する俺に男はグッと顔を近づけてきた。顎を掴まれ、じろじろ顔を見られる。

「あー…なるほどなぁ」
「っ、ちょっと離し…っ」
「まあ、ヤれねぇこともねーな」

 不穏な単語を聞いて俺はなんとか手を離させた。蒼褪めながら逃げようとしたが、背後から抱きしめられ動くことを封じられる。
 ムッと香るバニラのような匂いに包まれながら、自分がつくづく運がないことを自覚した。

 *

 男に連れられたのはなんとザブールの仕事場だった。本当にこの男はザブールなのかと思ったが、露わになった体には一切の刺青がなかった。
 必死の抵抗も虚しく施術台に縛り付けられ、素っ裸にさせられる。

「あんた誰だよ…っ、一体何する気なんだ…!」
「俺の名前はラグナル。ラグ様って呼んでもいいぜ」
「呼ぶわけないだろう…っ、んぁ!?」

 男、ラグナルはザブールに似た顔をいやらしく歪ませながら体に舌を這わせていく。嫌なのに快感に慣れた体は反応して甘い声が出た。

「んな嫌がっときながら売女みてぇな声出すなよ」
「うるさ、ぁ…っ」

 熱い舌が立ち上がった乳首、浮き上がった筋肉のすじ、臍の窪みを嬲っていく。時折分厚めの唇が肌に吸い付くように口付けるのもたまらなく気持ちがいい。
 見た目から想像できないようなねっとりとした丁寧な愛撫に戸惑ってしまう。

「…やわらけぇ肌だな」
「ちょっ、そんなとこなめるな…っ」
「んー?」

 男ーーラグナルは俺の両脚を掴み上げ、奥の窄まりに舌を這わせてきた。舌先で会陰をなぞられ、耐えられず腰をビクつかせてしまう。

「あっ、やめ…っひ、ぃ…っ」
「うめぇ穴だな」

 脚の間から見えたラグナルのいやらしい笑みにぞくりとした。蛇のような眼光に見つめられると体の奥に隠されていた被虐的な部分が疼いたような気がした。


「ーーなんだぁ?おもしれェことしてるじゃねェか」

 妖しい空気を裂くように、突然低い声が響いた。


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