ザブールと弟

「久しぶりじゃねェか、今はこっちで商売してんのかァ?」
「そうだよ…ま、こっちの王族様はたんまり買ってくれるからなァ」

 状況を無視して交わされる会話を聞いていたが、耐えきれず俺は口を開いた。

「…話すのはいいんだが、これ外してくれないか」
「「あぁ、わりィ」」

 うんざりしながら縛られた腕を動かすと、大して悪いと思ってないトーンの返事が2人から返ってきた。

 *

「ーーザブールの弟、ねぇ…」

 そう言って、目の前に並ぶそっくりな顔をした男たちを交互に見た。話を聞くとラグナルはザブールの弟で、絵を描く仕事をしているらしい。

「絵を描くような人には全く見えないな」
「アンタは俺の絵を見てねェからそう思うんだよ」

 俺サマは天才だからなァ、と下品な笑い声をあげるスキンヘッドに俺ははぁ…という返事しか返すことができない。ザブールは瓶入ったウィスキーを飲みながら口を挟んだ。

「こいつは王族と貴族相手に絵が売れるほど売れっ子の絵師だぜェ」
「…本当か?」
「あぁ、王宮には俺の絵が飾られてんだ」

 正直、どんな絵を描くのか全く想像できない。何回かザブールの刺青のデザイン画を見たことがあるが、すごく上手かったから本当に上手なんだろう。

「で、アンタと兄貴はどーいう関係なんだよ」
「ハジメと俺かァ?」

 そう言いながらザブールはニヤニヤしながら俺の肩を抱き寄せた。嫌な予感がして離れようとしたが、丸太のような腕は俺を離そうとはしなかった。
 チラッと目の前にいるラグナルに目を向ければ、口角を緩く上げながら葉巻に火をつけていた。
 するとザブールに顎を掴まれ、口付けられた。口を無理やりこじ開けられ、噎せるような濃いウィスキーが流し込まれた。口内を分厚い舌が荒らすよう動き回る。酸欠になりそうになる直前で、ようやく唇は解放された。

「こーいう関係」

 そう言って、ザブールは俺の口端から溢れたウィスキーを舐めとった。

「…ふーん?」

 ラグナルは大量の煙を吹かしながら、俺とザブールを見つめた。徐々に妖しい雰囲気になっていることを感じながら、俺はザブールに体を預けるようにもたれかかった。


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