最終話
麻也は目を見開いて、恐る恐る足を見た。
「ーーな、に」
そこには銀色に輝く足枷がつけられていた。
驚きで固まった麻也の頭を撫でながら、鷹人は口を開く。
「麻也が俺が好きだと言っても、優馬のところに行くかもしれない…いつ誰に惚れるかわからない」
「だからって、こんな…僕を閉じ込めるつもり?」
「仕方ねぇだろうが…現にお前は、優馬に揺らいだんだからな」
鷹人の瞳には仄暗い光が宿っていた。
ぞくりと冷たいものが背筋を通った気がした。鷹人は小刻みに震えだした麻也の手を握り、微笑んだ。
「怖いか?ーー大丈夫だ、麻也は俺のモノで俺は麻也のモノだ…一生、な」
そう言って抱きしめられる。
腕の中は暖かくて落ち着くはずなのに、麻也の体は震えていた。
「あ、ああっ、はぃ、って…や、あぁっ!」
「く、きついな…っ」
中を熱に開かれる感覚に麻也は喘いだ。
鷹人はゆっくり動き出し、少しずつ激しさを増してくる。肌がぶつかる音が部屋に響く。
中を激しく突かれ、強い快感が麻也を襲った。
「ひ、ぁ、ああっ!つよい、よぉっ、あっあん、あぁっ!」
「は…っ、まや、好きだ…っ」
鷹人はより深く繋がるようにキツく麻也を抱きしめた。
ーーこの男は自分のモノなのだ。
麻也は麻薬を使った後のような気持ちになった。くらくら、気持ちいい、気持ちいい、狂ったような暗い喜びを感じる。
足枷をつけた鷹人を怖く感じていたのに、今は愛しくて仕方がなくなっていた。
あんなに欲しかった男が自分を好きだと言って、抱きしめている。そのことだけで麻也は充分だった。
ーー甘い性の香りが充満する部屋で、朦朧とする意識のなか、麻也は暗い闇に包み込まれたような…そんな気がした。
あの夏の日から、季節は変わり春ーー鷹人は高校を卒業し、大学に入学した。
朝、鷹人を見送り麻也は家事をする。
最初は歩きにくく感じていた足も、今では慣れて気にせず歩くことができた。
ーーただ、部屋の中をずるずる這う鎖の音が不快な気持ちにさせるが。
麻也はあの日から全く変わっていないが、鷹人は大きく変わった。
夜遊びも、女遊びも、喧嘩もやめた。真っ直ぐに家に帰り、麻也を抱きしめ過ごす。最初は少し怖く感じていたが、今はそれが心地いい。
愛されている、そう感じることができた。
だが、一つ。麻也には不満がある。
麻也は外に出ていないから誰かに目移りすることはない、でも鷹人は?
鷹人はどうなのだろう、麻也はたまにそんなことを考えてしまう。
もし、もしも鷹人が違う人を好きになったらーーー
「……殺してしまおうか」
台所に立ち、包丁を見つめながらそう呟いた。
包丁に映る自分の顔はあの日の鷹人のようだった。少し笑ってから、冷蔵庫から食材を取り出した。
今日は鷹人が嫌いなピーマンでも使おうか、そんなことを考えながら麻也は上機嫌で鼻歌を歌った。
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