第16話

「僕は、もう…」
「ーー優馬のとこに行くのか」
「……ぇ?」

 ギリギリと肩に置かれている手に力が入った。痛みを感じて麻也は顔を歪める。
 鷹人の目には怒りが浮かんでいた。


「許さねぇぞ、そんなこと…」
「鷹人…痛いよ」
「お前は、俺のモノだ」

 繰り返された鷹人の言葉に麻也は唇を噛んだ。

「…もう、やめてよ」
「ーー麻也?」
「もう僕のこと振り回さないで!」

 悲痛な麻也の叫びが倉庫に響いた。

「僕は、僕は鷹人の恋人になりたかったんだよ…っ、でも、そんなこと無理だってわかってたから…だから諦めてたのに…っ、なのに今更自分のモノだなんて言わないでよ!」

 麻也は泣きながら、鷹人の胸を殴る。
 鷹人はなにも言わずに麻也の言葉を受け入れていた。

「どうせ、違う人とするんでしょ?俺のモノだなんて言って…好き勝手するくせに…っ」

 涙が2人の間にぽたぽたと落ちていく。

「僕のモノにならないんだったら、そんなこと言うなぁ!」

 鷹人はぎゅっとキツく麻也を抱きしめた。
 泣き喚く麻也を愛しく思っていた。


「…麻也のモノになったら」
「…っ」

 ”俺のモノでいてくれるか?”

 甘い囁きが麻也の耳に入り、じわりと溶けた。





 倉庫を出て、連れてこられたのは高層マンションだった。

「ここって…」
「俺の家だ」

 鷹人はそれだけ言って、エントランスに入り鍵を開けてエレベーターに麻也を連れていく。乗れば、キツく抱きしめられ性急に口付けられた。
 鷹人の舌が中に入り、上顎をなぞって、舌を絡め捕られる。

「ん、ぅ…っ、ぁ、ちゅ…んっ、はぁ…」
「は、っ…麻也…」

 激しい口付けに麻也は頬を染めて、甘い声を上げた。
 エレベーターが止まり、鷹人は麻也を抱き上げ降りた。足早に部屋の前まで行き鍵を開ける。
 中に入り、玄関に降ろされるがまた唇が塞がれる。
 鷹人は器用に舌を絡ませながら、麻也の靴を脱がせていく。麻也は必死にそれに応えながら、鷹人の首にしがみついた。
 唇が解放され、お互い見つめ合う。


「…ベッド行くぞ」
「ん…」

 ふわふわとした気持ちのなか、麻也は頷いた。
 また抱き上げられ、寝室に連れていかれる。キングサイズのベッドに降ろされ、鷹人が覆い被さった。


「ーー麻也が優馬といることを聞いた時、怒りでどうにかなりそうだった」
「…え?」
「あいつは俺のモノだって、そう思った」

 鷹人は麻也を見つめながら、静かに話した。

「初めてなんだ、こんなに…誰かに執着するのは」
「鷹人…」
「もう、離してやらねぇ…いいな?」

 こくりと麻也が頷くと、鷹人は優しく微笑んだ。
 初めてみる鷹人のそんな表情に麻也は胸をときめかせた。

 ーーーカチャ

 重く冷たいモノを足に感じた。


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