第3話

 外はまだ昼で、晴れていた。
 麻也は暗い気持ちを抱えながら繁華街を歩く。
 あそこを出て、もう10分くらいはたったのだろうか。麻也はぼーっと感覚がないような、そんな中でいた。
 ただ脚を動かして、目的もなく歩いた。


 ーー突然、胸ぐらをつかまれた。

「テメェ、どこ見て歩いてんだ?!」

 どうやら、ガラの悪い男にぶつかってしまったらしい。

「す、すません!」
「すませんじゃねぇんだよ!オラ、こっち来いや」
「え、あ、ちょっと!」


 ずるずる引きずられながら、着いたのは人気のない路地裏だった。
 男は麻也に何か怒鳴り、拳を振り上げた。






 じくじく、蹴られた腹や顔が痛んだ。
 男は麻也を好きなだけ殴ると財布の中に入ってある万札を何枚か取り、去って行った。

「いたいなぁ……」

 絞り出すように呟いた声は震えていた。
 視界が滲み、薄暗い路地が歪んで見えた。

 ”琉衣”

 あの可愛い子はこんな目には合わないんだろう。落ちていた制服は鷹人と同じ学校だったから、恐らく喧嘩もできる。
 鷹人は、喧嘩もできて可愛い子のほうがいいんだろうかーーいや、こんな僕を選んだのはただの気まぐれ。
 ーーあの人が抱くのは、きっとああいう男じゃなきゃいけないんだ。

 麻也は涙を静かに流した。

 しばらくして、足音が此方に近づいてきた。
 さっきの男かと、麻也は少し身構える。


「おわっ!?……え、ちょ、大丈夫かよ!?」

 そう言って駆け寄ってきた男を麻也は見上げた。
 短髪の明るい茶髪に、整った顔立ち。鷹人とは系統の違う美形だった。男は見覚えのある制服を着ていて、どこだったかなと麻也は少し思った。

「あんた、立てる?」
「うん、大丈夫……っ、いたた」
「もー、無理すんなって!」

 立てずにまた崩れそうになる麻也を支えて、男は立たせた。
 ふわりと、香水じゃない柔軟剤の香りがした。麻也は不良なのに、煙草や香水の臭いがしないことに少し驚く。

 男は麻也を見る。

「今からなんか予定あんの?」
「あったとしても、こんな体じゃ無理だよ」
「そー、だよな、うん」

 どこか考えるような素振りをした男に、麻也は首を傾げた。
 しばらくそうしていた男は、麻也に笑いかけた。


「あの、よかったら…今から俺の溜まり場一緒に来ねぇ?」
「……溜まり場」

 麻也の頭のなかに、さっきの出来事が頭の中に浮かんだ。
 俯いた麻也に、男は気遣うように声をかける。

「そんなボロボロな人を放ったらかしにできねーし、たぶんこのまま溜まり場行っても気になっちゃうし……」
「…………」
「な、すぐ手当てするからさ、来てよ」

 栗色の色をした瞳に見つめられ、しぶしぶ麻也は頷いた。


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