悪鬼様と会長

「ーーーおい」
「あぁ?」


昼休み、何となく体が怠くて保健室で寝ていた俺は誰かに起こされた。目を開ければやけに顔が整った男が目の前にいた。
何で起こされたんだよ、俺は…と苛立つ。


「お前は金村流鬼だな」
「…誰だテメェ」
「まさか俺を忘れたのか?悪鬼だか何だか知らねぇが、俺はお前にされた屈辱を忘れない」

目の前の男の顔が悔しそうに歪むのを見て、なんとか記憶を遡り、男を思い出す。

「…あぁ、あの時のやつか」
「やっと思い出したか」
「あんた、復讐しにわざわざ俺のとこまで来たのかよ?」
「そうだ!俺はあの日から悪鬼を忘れたことはねぇ…」

そう言う男にウンザリする。
怒りはまだ湧かないが、あの日を思い出すと汚ねぇ眼鏡野郎も頭に浮かぶ。

「あれは仕方ねーだろ、祟にちょっかいかけやがって…思い出すだけで腹がたつ」
「祟…鷺沼祟か。あいつもムカつく男だな、大体春人も春人だ!何であんな男に声をかける!」

あんな男…?

俺はベッドから起き上がり、男を睨みつける。

「ーー祟があんな男…?」
「あんな男だろうが、下賤で汚いのが見てわかる。俺の方が何十倍もいいだろうが」

ぶちり、何かがキレる音がして俺は男の胸ぐらを掴んだ。


「テメェなんかよりもなぁ、祟の方が何万倍もイケメンなんだよ!下賤だぁ?お前はゴミ以下だクズ!」
「クズ?!ゴミ以下?!鷺沼よりも俺の方がイケメンだろうが、もっとよく見ろ!」
「どんだけ近くで見てもなぁ、祟の方がいいんだよ!ばぁか!」

男は怒りで震えていたが、ハッと表情を変えた。

「お前、まさか…鷺沼と付き合ってんのか?!」
「そーだよ!悪いかよ?」
「は、はぁ?ありえねぇ、こんな冴えない可愛くもない男と、あいつが?」

信じられない、という男に俺は怒りががどんどん上がってくるのがわかった。

「テメェだってきったねぇ眼鏡とイチャコラしてんだろうが!」
「いや、春人は…まあ、いい」
「あぁ?!」

男は何か考える素振りをして、俺の顎を掴み無理やり顔を合わせてきた。

「こんな普通、それ以下かもしれない男のどこがいいんだ?」
「ぶっ殺すぞ、テメェ…」
「さっきからテメェじゃねぇ、俺には江ノ宮(こうのみや) 雅(みやび)という名前があるんだよ」
「知らねぇよカス!」

男、江ノ宮はピクリと眉を動かしたが、すぐに厭らしい笑みを浮かべ口を開いた。


「お前、下の具合がいいんだな?あの下品な男のことだ、オンナを選ぶ基準はそこなんだろ」
「はぁ?何言ってーー」

ーーー俺にも試させろ。


目の前に広がった江ノ宮の顔に、唇に感じる柔らかい感触。
ぞわりと、一瞬で全身に鳥肌がたった。


「ん、んぅ〜〜っ!」
「安心しろ、善くしてやる」

ヌルっとした物が口に入ってきて、思わず涙が出てきた。怒りを通り越し、酷い嫌悪感が体を支配する。
暴れようにも、ベッドに押し倒され手をベッドに縫い付けられた。

「や、ぁっ、ん〜っ!」
「なかなかいい声で鳴くな。こんなヤツにキスをしたのは初めてだが…安心しろ、すぐに善くなる」

キスが止み、手が服に入ってきた瞬間足を振り上げた。


「ーーーきっもいんだよ!この変態野郎!!」
「……っ?!」


振り上げた足は江ノ宮の股間にヒットしたらしい。
ひるんだ隙に抜け出して、蹲っている江ノ宮を蹴りつけていく。

「気色悪りぃことばっか言いやがって…テメェなんか糞以下だよ!この強姦野郎!レイプ魔!」
「…っ、かね、むらぁ…お前、俺の息子が死んだらどうすんだ!」
「死んじまえばいいんだよ!オラ、オラァ!!」

自慢の息子を蹴ってやろうと足を振り上げるが、キッチリ手でガードしていた。
怒りは治らず、何度も背中や腹を蹴り、江ノ宮を罵倒した。



ーーーブーッ、ブーッ

いきなり尻ポケットの携帯が震え、画面も見ずに電話を取る。


「誰だよ、こっちは忙しいんだよ!」
『何が忙しいんだ、流鬼』
「…っ、祟」

蹴っていた足を下ろすと、祟は独特な笑い声を上げた。

『遊びもほどほどにして、そろそろ戻ってこいよ。肉食いに行くぞ』
「肉?焼肉か?」
『おう、好きだろ焼肉。今から家のモンが迎えに来るからよ、早く戻ってこい』
「わかった、すぐ帰る」

電話を切り、唖然とした江ノ宮を見る。
まだ蹴り足らないし、怒りもあるが肉が待ってるんだ。

「顔も中身もお前は祟に劣ってることに気づいたかよ、カス。まだやりたらねぇけど、今回は許してやる」
「は……?」
「じゃあな、強姦野郎」

吐き捨てるように言って、俺は保健室を飛び出した。
江ノ宮雅ーーあいつは天敵リストに追加だな。次変なことしやがったら確実に殺す!


胸に誓うが、取り敢えず今は肉だ。
肉も祟も待ってる、そう思うと自然と足が速く動いた。




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