悪鬼様の嫉妬

「祟、これ食べてみてよ」
「あぁ?なんだそれ、いらねえよ」
「もー、つれないんだから」

 祟と隣で楽しげに話してるのは美人な女。
 昨日祟の実家に泊まり、朝起きたらこの女が来ていた。妙に仲が良さげで、見ていて胸のあたりがムカムカして気分が悪くなる。
 祟は俺のもんなんだよ!そう言ってやりたいけど、なんか言えなくて鈴木お手製のカップケーキにかぶりついた。

「る、流鬼さん大丈夫ですか?」
「んだよ、鈴木」
「そんなやけ食いしたら晩飯食えなくなりますよ。カップケーキはその辺でやめときましょうや」

 止めようとしてくる鈴木を無視して食べ続けていると、祟がこっちに近づいて来た。

「流鬼、あいつと街に行ってくるわ」
「はぁ?なんで?」
「美里…あいつが案内しろってうるせえんだよ」
「お前が行かなくていいだろ、鈴木に任せたらいいじゃねえか」

 祟はどう仕様もない子供を見るような目で宥めて来た。なんだよ、今日は俺と買い物行く予定だった筈なのに。あの女を優先するのかよ!
 腹が立った俺は近くにあった雑誌を祟の顔に投げつけた。

「じゃあ好きにしろよ!俺は寮に帰るからな」
「おい、流鬼…」
「触んな!クソ野郎!」

 祟と鈴木が止めてくるが構わず荷物を持って、玄関に向かう。玄関の外にはあの女が立っていた。

「あら、帰るの?」
「………」
「ごめんね、祟を取っちゃって」

 勝ち誇った顔で見下ろしてくる女にグラグラ腹の底が熱くなる。キレてるはずなのに、頭の中は変に冷静だった。

「うるせえ、クソアマ!あんな野郎こっちから願い下げなんだよ!」

 そう怒鳴りつけて、俺はタクシーで寮に帰った。
 スマホが何回か震えていたが無視だ、無視。あの女と好きにしてろ、馬鹿野郎。


 *

「ーー、き…流鬼」
「ん……」

 体を優しく揺さぶられ、意識が覚醒する。目を開けて見上げれば、そこには祟がいた。

「ただいま、流鬼」
「うるせえ…触んな」
「こんな目腫らして…泣いていたのか?」

 寝返りをうって、背中を向けようとしても抱き起こされてできなかった。目元を優しく撫でられて、むず痒くなる。

「あの女のとこ帰れば?」
「んなこと言うなよ。別にあいつとは従姉妹でそんなんじゃねえ」
「クソ女はお前のこと好きみたいだけどな」
「俺は流鬼が好きなんだよ、美里は好きじゃねえよ」

 祟はそう言って俺に口づけた。

「じゃあなんであいつ優先するんだよ」
「そりゃあ…これ買いに行きたかったからな」
「は?なんだよ、それ…」
「流鬼が欲しがってたヴィヴィアンのネックレス」

 箱を開ければでかめのネックレスが入っていた。俺がこの前欲しいと言っていたのを、祟は聞いていたらしい。限定のそれは高くて買えないと諦めていた。

「お前にプレゼントしたくて買ってきた。ごめんな、不安にさせて」
「ば、か野郎…っ、それをちゃんと言えよ、クソ…っ」
「言ったらサプライズにならねえだろ」

 こっちは不安で不安で死にそうだったのに、なんだよサプライズって。今度は安心して泣きだす俺を祟は抱きしめた。顔中にキスをしてくる祟は機嫌が良さそうだ。

「ま、俺は流鬼が珍しく妬いてくれて嬉しかったけどな」
「しね、ばか」
「死ねとか言うなよ、犯すぞオラ」

 犯せよばか、そう祟に言うと激しく口づけられた。軽く抱き上げられて俺の部屋を出る。祟の部屋に行くみたいだ。

「不安にさせた分たっぷり可愛がってやるからな、流鬼」
「…ん、早く連れてけ」

 祟は素直な俺を見て、変な笑い声を上げた。
 部屋に着けば、俺もめちゃくちゃに抱かれたいと思っていたから、積極的に祟に求めた。
 次の日、生き生きした祟に対して、俺は重い腰に耐えていた。次からは程度を弁えて程々にやるべきだな、そう俺は学んだ。



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