後編
「ーーお昼、お先に失礼します」
ユウキは今日も早めに仕事を終わらせ、公園に昼食をしに向かう。少ししてから、最近一緒になる頻度が増えたバレストがやってくる。
拒む理由もなく2人で話しながら食べていると、今日は珍しく違う人物が顔を出した。
「やあ、僕も御一緒させてもらってもいいかな?」
「ぁ、ルーカスさん。いいですよ、バレストさんはどうですか?」
「…構わないが」
何か言いたげなバレストにルーカスは笑みを浮かべ、ユウキの隣に腰をかける。そんな2人の間に挟まれる形になったユウキは、いくらベンチがでかくても少し窮屈だと思った。
ルーカスはユウキの弁当箱を覗き込み、声を上げた。ユウキの今日の弁当は、唐揚げや卵焼き、ほうれん草の胡麻和え、金平ごぼうなどが入っている。
「すごく美味しそうだ…」
「ありがとうございます、でも普通ですよ」
「1つ貰ってもいいかい?」
ユウキは快く了承し、何個かある卵焼きを差し出した。それを美味しそうに食べるルーカスに笑みを浮かべた。ふと、ユウキが隣を見るとバレストは何処か不満げな様子だった。
そんなバレストとに対してご機嫌なルーカスは口を開く。
「ねぇユウキ、僕にもこれ作ってくれないか?」
「なっ!?」
「え、お弁当ですか?」
「そうそう、お弁当!いいだろう?」
「ーーダメだ!」
突然張り上げられたバレストの声にユウキは驚いた。ルーカスは目を細め、上司を見つめる。
「いいじゃないですか、事務局長の許可は必要ないでしょう。ね、ユウキ?」
「だが、ユウキの負担になるだろう。こんな凝ったお弁当を2つもなんて…」
険悪な雰囲気の2人にユウキは気まずくてたまらなかった。
「手軽なものでよければ大丈夫ですけど…」
「本当かい?!ありがとう、ユウキ!」
「ゆ、ユウキ!」
落ち込んだようなバレストに、嬉しそうに笑うルーカス。バレストが何故か可哀想に見えてユウキは声をかけた。
「バレストさんの分も用意しますから…」
「…い、いいのか?だが、負担になるのでは…」
「大丈夫です!3人で食べましょう」
「ありがとう、ユウキ」
やっと笑顔を見せてくれたバレストに、ユウキはホッとした。しかし今度はルーカスが不満げな様子になり、ユウキはなんとも気まずい居心地の悪い昼食時間を過ごした。
*
ユウキがギルドに戻れば、いつも通り冒険者達で賑わっていた。それを横目に歩いていると見覚えのある白髪を見つけた。
「ーーおぉ、ユウキじゃねえか」
「アルベルトさん」
「へー…子供みてぇなのに、ほんとに働いてるんだな」
そう言うアルベルトに、ユウキは苦笑いを返した。前まで子供扱いされたり、子供に間違えられると怒っていたユウキだが、慣れた今では笑いしか出てこない。
「今度、俺とも飯食いにいかねえか?」
「僕と…ですか」
「あぁ、ユウキが気になるから話してみたい」
「はぁ」
ニヤリと笑うアルベルトに、ユウキは戸惑った。自分なんかを気にするアルベルトが理解できなかった。
最近アルベルトに限らず、様々な人に興味を持たれていた。嬉しいことなのかもしれないが、全員雄だからかユウキは複雑な気持ちでいた。
話しかけてくるアルベルトに仕事があるからと言って、ユウキは自分のデスクに戻った。
「ユウキ浮かない顔してんな」
「そうですか?」
「あぁ、なんかあったのか?」
隣のデスクにいる、ユウキの先輩である狼獣人のワイルに話しかけられた。食事によく誘われることを話すと、ワイルはニヤニヤと口元を緩めた。
「いいじゃねえか、モテ期だな」
「モテ期って…全員雄ですよ?」
「何言ってんだよ、雄でも番うことができるだろ」
なんの問題もない、そう言ったワイルにユウキは絶句した。この世界では同性婚は普通であることをユウキは忘れていた。
まいったな、とユウキは頭を抱えた。断る理由に同性は無理というのは使えない。
「どうするんだ、ユウキ」
「うーん、告白されたわけじゃないし…本当に自分を好きかわからないですからね。様子見します」
「ふーん?ま、確かにまだわからねえな」
怪しい笑みを浮かべるワイル。
そうだ。まだ自分に好意を寄せているとはわからない、ユウキはそう自分を励まして書類に向き直った。
数日後、バレストやルーカス、アルベルト以外にも言い寄られ、本当にモテ期が来ることをユウキはまだ知らない。そして、この時断っておけばと困り果て、後悔することもまだ知らない。
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