中編
仕事をしっかり済ませ、ユウキはデスクの荷物をまとめて帰り支度をしていた。
すると、背後から肩をたたかれ振り返る。そこにいたのは鳥獣人の鷲、ルーカス=ビビッドだった。
「あ、ルーカスさん」
「やあユウキ、君も帰るのかい?」
「はい、仕事は終わったので」
「僕も終わったから、一緒にディナーに行かないか」
奢るよ、そう爽やかにルーカスは笑った。
断る理由もないユウキは、もちろんいいですよ!行きましょう、と同じく笑顔で返した。
*
ルーカスに連れられてきたのはギルド近くにある、魚料理中心の料理店だった。最近できたその店はおいしいとギルド内でも有名で、ユウキは少し興味があった。
ウェイターに案内され、席に着く。その間、周りの雌獣人達からの視線がルーカスに向けられていて、改めてユウキはルーカスの美形さに驚いていた。
「ここずっと来てみたかったんですよ」
「ふふ、喜んでもらえてよかったよ」
綺麗に笑うルーカスに、ユウキは見とれてしまう。
獣人は人型になっていると美形が多い。ユウキのような東洋人のような顔の獣人はおらず、基本西洋、またはラテン系の彫りの深い顔立ちな人が多いからか、ユウキは少しうらやましく思っていた。その中でもルーカスは特に整っていた。
お互い白身魚の料理とワインを注文し、料理が来るまで仕事や様々なことに話を広げた。
「ユウキは恋人はできた?」
「いや…いないですね」
「ずっといないの?…意外だね、ユウキはすごく魅力的なのに」
「そうですか?まあ、あんま結婚とか興味ないですし…うん、恋人は今はいらないですね」
ユウキは恋愛に対して昔から淡白で、アラサーになっても結婚は考えていなかった。両親が他界してから仕事にのめり込み、そこからは恋愛より仕事のほうが楽しく感じていた。更には、面倒だとも思っていたのだ。
この世界で獣人相手に恋愛したくないという偏見はないから、しようと思えばできるがユウキは未だに興味はなかった。
「僕もあまり結婚には興味なかったんだけど、最近は番や恋人を持ったほうがいいのかなって思ってね」
「ルーカスさんはかっこいいからすぐできそうです」
「今気になる人はいるんだ。アピールはしてるんだけど、どうやら気づかれてないみたいなんだ」
「うーん…難しいですね」
やっぱり恋愛は面倒だと、ユウキは思った。
そんなユウキを見て、ルーカスは笑みを浮かべる。そうこうしているうちに料理が来て、一旦その話は終わった。
*
「おぉ?ルーカスじゃねえか!」
「ん?…あぁ、アルベルト」
「久しぶりだな…って、今日はずいぶん可愛い子連れてるんだな」
2人が美味しい白ワインを飲んでいると、白髪の虎獣人がルーカスに声をかけた。ユウキはその男をみて、どこかで見たことがある顔だと思った。
「紹介するよ、彼はユウキ」
「サノ=ユウキです」
「ユウキ、彼はアルベルト」
「アルベルト=クラッシだ、よろしくな」
ニカッと虎獣人、アルベルトは端正な顔を歪めて笑った。ユウキは差し出されたゴツゴツした手を掴み、握手を交わした。
「アルベルトはA級ハンターで、ギルドでは有名なんだよ」
「あぁ、そうなんですか」
どうりで見たことがあるわけだと納得した。
バレストと同じくらいの体格にユウキは見惚れてしまう。少し羨ましく思ってしまった。
「ユウキって、まさかギルドで噂になってる?」
「そうだよ」
「へぇ…こんなヤツがねぇ…」
ユウキはこんなヤツ、という言葉にムッとするがアルベルトに言われると何も言い返せなかった。不満げなユウキが面白いのかアルベルトは笑い、ルーカスはそれを注意した。
「アルベルト、僕たちは2人きりの食事を楽しんでいるから、君はもうそろそろ彼女のところに戻ったほうがいいんじゃない?」
「はいはい、邪魔者は消えますよ…じゃあな、ユウキ」
「はい、また…」
アルベルトに頭を撫でられて付け耳なのがバレないかヒヤヒヤしたが、バレてはいないようでホッとした。ルーカスはアルベルトの手を睨み付けていたが、ユウキはそれに気づかず冷や汗を拭っていた。
アルベルトが連れの美人な雌豹の獣人のとこに戻り、また2人は食事を再開した。
*前 |
次#