合間に行われた特別メニューは、別の場所
へと移動され、緑でいっぱいだった景色と
真逆の一面は真っ青な景色へと変わった。
自然豊かな山の中といえど、暑さはあまり
変わり無く、ちょうど思い切り水を被り
たいと願ってしまう、そんな猛暑だった。
「海だー!!!!」
そして監督達の粋な計らいで、熱中症対策
と称して、彼らは白と青の輝くその場所に
連れ出され、練習続きでまだ夏らしい事を
行っていなかった分、その景色を見ると
テンションは上がる。
『かおりちゃん、それ可愛い!』
「名前も似合ってる。」
「名前ここ、モチモチして美味しそうー。」
『ちょっと、雪絵さん!?何処をお触りに
なってるの!!?』
嬉しそうにしているのは男子だけで無く、
女子マネージャー達も更衣室で楽しそう
に会話をして、この日の為に用意した水着
をお互いに見せ合っていた。
この後はそれぞれTシャツやパーカー等
それらを隠すものを着る予定の為、今の
姿を見ることが出来るのはこの時だけ。
背後から名前のその弾力を楽しむ白福は
自分のお気に入りであるポイントを指で
押し始め、彼女達のやり取りを見ていた
谷地には刺激が強すぎたのか、赤面して
倒れ込む。
「仁花ちゃん、大丈夫!!?」
「美女同士の戯れが眩し過ぎます。」
「あちゃー、名前ったらー。」
『え!?私のせい!!?』
慌ただしい女子更衣室になっていく一方、
先に着替えが済んでいた男子達は先に準備
運動をして、木兎は腕を組んで真剣に何か
を悩んでいた。
「木兎さんどうしました?珍しく難しい顔
をして…。」
「珍しくとは失敬な!名前ちゃんがどんな
水着着てるのか予想してただけだよ。」
「ああ、通常運転でしたね。」
「生憎、アイツはビキニは持ってねえぞ。」
「それをしっかりと把握済みの黒尾さん
にも不気味さを感じてしまいますね。」
「名前、この前梟谷のマネージャーさん達
と学校帰りに買い物に行ってた気がする
けど。」
「「マジで!?それは知らねえ!!!」」
息ピッタリに同じリアクションを取る主将
達に赤葦と孤爪も同時に冷ややかな視線を
送り、二人の反応が不服なのか木兎は赤葦
に指をさす。
「赤葦、お前はこっち側だって知ってる
からな!!!」
「俺は想像よりも来て欲しいものを贈り
たい側ですから。」
「いや、全力で止めるわ。」
赤葦は血相を変える夜久を見て不思議そう
に首を傾げ、言い争いを続けている先輩達
の会話をもう1つ下の後輩達は苦笑いで耳
に入れた月島は眉間に皺を寄せ、彼の横で
影山もその会話を耳に入れていた。
「ちょっと王様、名前さんで変な事を考え
無いでよ?」
「あ?まだ何も言ってねえだろ。」
すると、月島は昨日思わぬ事実が判明した
影山を警戒しているのか、彼女の事になる
と敏感になり、ジロっと睨んで釘を刺す。
こってり絞られそうになった影山を名前
がしっかりと弁解していたのだが、月島
はどうやらそれも気に入らないらしく、
自分の大切な先輩がよりにもよって…
と考えているのか、月島は眼鏡を機嫌が
悪そうに上げていた。
「言われなくても、あの人にもう迷惑
なんてかけねえよ。」
眉を顰めてそう言い切った影山は、もう
彼女と関わる事だってあまり無いだろう
と視線を逸らし、あの日触れてしまった
手をグッと握り締める。
「やっぱり、見てるとイライラする。」
影山があの時の感覚を覚えている事が
分かり易すぎる反応に、苛立ちを感じ
ている月島の口からは本音が漏れる。
「何でそこは完全防備なんだよ!!?」
『海は紫外線強いから日焼け対策バッチリ
しておかないと。』
「大丈夫、名前の可愛い水着姿は木兎の
分も私が触って、拝んでおいたから。」
「ゆっきー、握手してください!!!」
後から駆けつけた名前達の姿を見た木兎の
嘆く声が響いていたが、今はその格好で
良かったとさえ思う。
彼らにとっては刺激が強過ぎるのだから。
「苗字さんファスナーは上までしっかり
と締めましょうね?」
『それはさすがに暑過ぎませんかね?』
「首元が一番焼ける所だろ。日焼け止めは
塗ったのかよ?」
『大丈夫、潔子ちゃんが塗ってくれた。』
「…二度塗りする?」
『ちょっと、クロ!!!』
他の誰にもその肌を見せたくないが、自分
はちゃんと彼女の中身を楽しんでおきたい
その男は何かと理由をこじつけて、彼女の
パーカーの首元に隙間を作ろうと引っ張る
とそれを見事に阻止する夜久の綺麗な飛び
蹴りが入る。
「ぶふっ!夜久、何すんだよ!!?」
「何すんだよじゃねえよ、セクハラを堂々
とすんな!!!」
「そうですよ、抜け駆けはずるいです!
夜久さんと俺だって見たいのに。」
「俺は何も言ってねえだろ!!!」
「えっ、さっきファスナー開けたいって
言ってませんでした?」
「リエーフ、お前…!!!」
怒り出す夜久に加勢する灰羽は、彼女に
知られたくない部分もさらっと言い出し
始め、ベクトルが少しずれていく論争に
発展している彼らを止めようとすると、
今度は孤爪にそれを止められる。
「あの人達の事はほっとけばいいから。」
『そういう訳には…。』
「さっき、烏野のマネージャーさんが名前
の事を呼んでいたよ?こっちで何とかする
から、名前は向こうに行ってて。」
『そうなんだ、分かった。それなら、
よろしくお願いします。』
孤爪に促され、急いで呼ばれた方へと
向かっていけば、普段よりも足に負担の
掛かるランニングやトレーニングが待って
いて、それのサポートの指示だった。
そしてその練習の後は嬉しいことにアイス
の差し入れを貰っていたらしく、学校関係
無く色々な部員へ配って欲しいとの事で、
名前はそれを両手に走って回る。
『保護者からの差し入れです。』
「冷たっ…て、名前さん。」
『ふふっ、涼めたでしょ?』
休憩に入ると、涼みに海に浸かったり、
ぼんやりと景色を眺めたり、暑さに
構わず砂浜を走ってみたり、砂で遊ぶ
など過ごし方はそれぞれで、その中で
月島はぼんやりと眺めるタイプで暑さ
に項垂れる彼を発見した名前はすぐに
月島にアイスを渡した。
ただし、渡し方は少しイタズラ混ざりで
突然の冷感に驚くが、月島も優しく目を
細め、彼女からお礼を言って受け取る。
「確かに一気に冷えましたけど。」
『溶けちゃう前に食べてね?』
「名前さんは食べないんですか?」
『私も後でいただくけど…。』
その前にと月島を越した先には影山の
姿があり、もちろん彼に先に渡さねば
と思う彼女は、視線が合った影山に
微笑みかけた。
『影山君も良かったらどうぞ!』
「何でそんな所に…。」
表情を歪ませる月島は嫌そうに言ったが、
それは無意識に影山と名前を気にしていた
せいで、偶然では無かった。
こんな事なら影山から距離を置いておけば
良かったと後悔するのも遅く、彼女は影山
に近づいて、先日のあの光景を思い出して
しまう彼は緊張から唇を噛み締めていた。
『どうしたの、調子悪い?』
「いや…違います。普通です。」
『良かった、じゃあアイス食べれるね。』
呑気に笑顔を向けている名前とは逆に、
目を泳がせている彼はどこに視点を向ける
べきなのか正解が分からず、咄嗟にギュッ
と目を瞑る。
『影山君?』
「何でもないっす、アザっす!!!」
彼の中では気になるなら単純に見なければ
いいと言う結論になったのか、突然目を
閉じた他校の後輩に名前は戸惑い、何故
か傍から見たら変わった様子なのだが、
影山は全然普通だと答え、アイスを受け
取ろうとする。
「名前さーん、俺にもください!」
『リエーフ待って、あと取りに行くから。』
それは名前が後ろを向いた瞬間と影山が
手を上げたのは同時で、影山が触れていた
ものはアイスとはまた違った感触だった。
「…アイスじゃなくて餅?」
目を閉じたまま手を上げたのが災いだった。
恐る恐る瞼を上げると、掌には彼女のお尻
をピンポイントに掴んでいて、真っ赤な顔
の彼女とは反対に影山の表情は青冷める。
「すみません、尻はわざとじゃないです!」
大声を出してハッと我に帰った時、そこは
青空とは違った合宿所の天井だった。
「何だ…夢か…。」
現実では無かったことに胸を撫で下ろし、
そして妙にリアルだった感触が不思議で
思わず手をじーっと見つめてしまう。
もしかしたら、あの時のハプニングも夢
だったのかもしれない。
「ねえ、この期に及んでまた変な事考えて
ないよね?」
「この期に及んで…?」
「影山クン、楽しそうな夢でも見てたのかな?」
しかし、それはチームメイトの冷たい声で
現実へと引き戻されてしまう。
彼が横を向いた瞬間、月島とたまたまその
寝言を耳にしていた黒尾は鋭い視線で彼を
見ていたのだから。
『何か…変な夢見ちゃったな。』
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