「諏訪、飲み行かない?」

そう言いながら平然を装って諏訪の肩に腕を回す。心の中では死にそうだ。普通に恥ずかしい。

「あ?またかよ、この間行ったろ」
「それ1週間前じゃん」
「そんな連日行くもんじゃねぇだろ」
「連日じゃない、週1」
「似たようなもんだろ」

本当ならショッピング、とかレストラン、とかもっとお洒落なところに行った方が可愛げあるんだろうけど。諏訪はそう言うのがあまり好きじゃないと前に愚痴っていたから誘わない。それに私もそういうのが大好きって訳じゃないから。

「あれ、梓さん?」
「やーん!堤くん!久しぶりー!」
「お久しぶりです」
「笹森くんも久しぶりだねー」
「は、はい!お久しぶりです!」
「やだもー!かわいいー!」

たまたま近くを通りかかった堤くんと笹森くんに会うのはかなり久しぶりで思わずハグ。ついこの間までアメリカに行ってたからついその感覚でハグしちゃった。あわよくば諏訪がヤキモチ焼かないかな、なんて。

「誰にでも手出すんじゃねぇ!」
「人聞き悪いこと言わないでよ!」

笹森くんに抱きつく私を怖い顔で引き剥がした諏訪を見てちくり、と胸が痛む。やらなきゃよかった、とかなり後悔した。ヤキモチどころかただのビッチだと思われている。笑顔を作って諏訪に向き直り口を開く。

「諏訪隊って今日防衛任務ないでしょ?この後18時にラウンジね、いつものとこ行くから」
「は?あ、おい!梓!」

これ以上ここにいるとため息の一つや二つ出てしまいそうで、反論させまいと一息に喋ってその場を立ち去る。諏訪はいつも私の誘いを断らないけどやっぱりこういう強引なのは良くないのかな。なんて考えながら歩き出して、角を曲がってすぐ誰かが私を引き止めた。

「梓さーん」
「げ…最悪…」
「いや失礼すぎでしょ」
「普通だから。で、何?」
「また飲みに行くの?」
「立ち聞きか、もっと最悪だな」
「聞こえたんだって!」

声の犯人は太刀川。ヘラリと笑いながら近づいてきた太刀川はさっきの話を聞いていたらしい。なんて奴だ。終いには、偶にはお洒落なところ行かないと愛想つかされるよ、なんて言っていなくなった。そんなこと言われなくたって私が一番よく分かってるっての。

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