「なに顔真っ赤にしてんだよ」
「だ、だって…」

顔を真っ赤にして俺と目を合わせようとしない梓を更に追い詰める。

「だって、なんだよ」
「あ、う…その…」

らしくない梓の女子な部分にかなりグッときて、クラクラと眩暈のような感覚に襲われる。

「かっ、こよくて…」

もう林檎みたいに顔を真っ赤にしてそんな事を言った梓に完全にやられた。やっぱり昨日の酔っ払った梓を見てからずっと自分がおかしい。らしくない事は口をついて出てくるし、梓のために普段なら作らない飯まで作ってやってるし、何してんだ、俺。

「か、っこよくて…ず、るい」

好きな女に、こんな事言われて何とも思わない奴はいないだろ、と自分を正当化させる。俺は悪くない。悪いのはこいつだ。

「す、わ…?」

何も言わなくなった俺を不思議に思ったのか戸惑いながら声を掛けてきた梓と目が合った。真っ赤になった顔と、少し涙が滲んだ目にさっきよりも強い眩暈のような感覚と加虐心が湧き上がる。

「諏訪…?んっ、!?」

ほんとに無意識だった。背中に回してた手を腰に下ろして、後頭部にあった手を自分の方に引き寄せる。梓の口から聞こえる声と拒否するどころか、俺の服の裾を掴んで一生懸命背伸びをする姿にまた眩暈のような感覚に襲われた。

上手く息継ぎが出来ないのか、少しすると苦しそうに俺の肩を梓の手が叩く。名残惜しく思いながら口を離して梓の顔を見る。目が合った瞬間、バッと効果音がつきそうな勢いで目を逸らす梓を抱き締めて言った。

「梓、―」

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