あの日、バレー部に見学に行った日から私はもっとおかしくなってしまった。

普通に返せるようになってきた挨拶ができなくなって、合わせられるようになった目が合わせられない。

黒尾くんを見ると胸が苦しくて、顔が熱くなる。

「ど、どうしよう…」

「それは、あれだな」

「…?」

「恋だろ」

「…へ、ぇ?」

だんだんと黒尾くんを避けるようになってしまって。でも、そうすると胸が痛くて。悩みに悩んで、夜久くんに相談すると帰ってきた答えは衝撃的すぎて。

「ぇ…こ、恋…?」

「じゃあさ、黒尾がほかの女子と仲良くしてたらどう思う?」

「っ…!やだ…」

「黒尾ともう話せなくなったら?」

「やだ…!」

「白川の中でもう答えは出てるんじゃねぇの?」

夜久くんが言うことを想像するだけで胸が苦しくて、つらくて。涙が出そうになる。私の返事に夜久くんはフッと笑って行ってこい、と背中を押してくれた。

「あ、ありがとう…!」

「おー、がんばれよー」

何年ぶりに走ったんだろう、ってくらい久しぶりに走った。

『多分、部室にいるから』

そう教えてくれた夜久くんの言葉を頼りに走る。走る。走る。

息が切れて、涙で視界が滲んで、苦しくて、立ち止まりたいけど。黒尾くんに会いたい。その気持ちが私の足を動かした。

バタンッ!と勢いよく開けた扉の向こうで黒尾くんが驚いたように目を丸くしていて。

「く、ろ…おくっ…!」

膝に手をついて、胸を抑える。ヒューヒューと喉から音がして、口の中が乾く。

言いたいことが、あるの。黒尾くん。あなたに、聞いてほしいの。

2017/4/15 執筆


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