「はよ、白川ちゃん」
「あ…お、はよ…ござ、ぃます…」
朝、本鈴が鳴るほんの数分前。慌ただしく教室に入って来た黒尾くんは毎日私に挨拶をする。
席替えをしたあの日から一週間。毎日挨拶をされているにも関わらず私がまともに挨拶を返せたことはない。ただの一度も、だ。
「げ、やべ」
挨拶すらまともに返せない私に、なぜか黒尾くんは毎日声をかけてくる。どうしてだろう、と思考を巡らせていると隣から小さな声が聞こえた。
「白川ちゃん、シャーペン二個持ってたりする?」
「あ、えと…あ、ります…」
「まじ?一本貸してくんね?」
「ど、どう…ぞ…」
ペンケースに入っているシャーペンを取り出して渡す。
「おっ、サンキュ」
「い、いえ…」
ニコリと笑った黒尾くんとバッチリ目が合って、慌てて下を向いた。
2017/4/15 執筆
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