一週間前から隣の席になった白川美月ちゃんはかなりビビリだった。

挨拶をしても聞こえるか聞こえないかくらいの声で返事が返ってくるし、目が合うとそれはもう物凄い速さで逸らされた。

今日も今日とて挨拶をするが、返ってくるのは小さな声。どうやったら仲良くなれるかと考えを巡らせながら1限の準備をする。

「げ、やべ」

鞄を開けて、思わず声が漏れた。朝はあったペンケースが入っていない。恐らく部室で書類を書いた時、そのまま置いてきてしまったのだろう。

夜久にでも借りるか、と夜久に声をかけようとしてふと思う。…白川ちゃんに借りたらいいんじゃね?

「白川ちゃん、シャーペン二個持ってたりする?」

突然かけられた声にピクリと肩を揺らしながらも返ってきた肯定の返事。ラッキー、と思いながら頼んでみると恐る恐る、と言った様子で俺の手にシャーペンを乗せてくれた。

「おっ、サンキュ」

そう言って白川ちゃんを見ると、一瞬目が合った。ま、当然のごとく物凄い速さで逸らされたけどな。

どうしてもこういうタイプは構いたくなるのが俺の性分で。次の席替えまでに普通に話が出来るくらいにはなりたい。

「お前、何企んでんの…?」

そんなことを考えていると斜め前の席の夜久に引きつった顔をされた。

2017/4/15 執筆


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