「白川ちゃん、おはよ」
「お、はよう…」
「お、そろそろ慣れてきた?」
「っ…!」
いつものように教室に入ってきた黒尾くんが俯く私の顔を覗き込む。思わずガタリと椅子から落ちそうになるのを耐えて、顔を逸らす。
「何女子いじめてんだよ、黒尾」
「人聞き悪いこと言わないでくださーい」
「ったく、大丈夫か?」
「だ、だいじょ、ぶ…」
バシン、と痛そうな音と一緒に黒尾くんじゃない人の声が聞こえて肩がビクリと跳ねる。優しい声に恐る恐る顔を上げると同じクラスの夜久くんと目が合って思わず逸らす。
「なんか初めて会った時の研磨みてぇだな」
「あ、やっぱりやっくんもそう思う?」
「バレー部なら皆思うんじゃね?つーか、やっくんってのやめろ」
大体の人は私が目を逸らすと感じが悪いと離れていくのに、離れるどころか歩み寄ってくる黒尾くんが私はわからなかった。一人でも頭の中がいっぱいなのに夜久くんも笑っていて離れていく様子が見えない。
「あ、俺、夜久衛輔な。よろしく、白川」
「っ…よ、よろしく…」
二コリと爽やかに笑う夜久くんは黒尾くんよりは怖くないけれど、やっぱり夜久くんもわからない。
2017/4/15 執筆
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