あれよあれよという間に連れてこられた体育館。ボールの音と男子の声。私よりずっと大きい身長の人たちが走って、飛んで。

『ま、お試しってことで今日の放課後1日体験してみようぜ』

黒尾くんにそう言われ断ることができなかったビビりな私は今、体育館の隅っこに置かれたパイプ椅子に座ってバレー部の練習を見学している。

「白川ちゃん!」

「は、はい…っ!」

ボーっとしていた私を呼ぶ声に思わず返事をして立ち上がる。少し離れた場所で黒尾くんと夜久くんがクツクツと笑いをかみ殺しながら私に手招きをした。

二人がいる場所には身長の高い知らない人ばかりで。ピタリと足が止まってしまう。小さく震える手をギュっと握りしめる。

どうしよう。どうしよう。

「白川」

「ぁ…」

「大丈夫か?」

「だぃ…じょ、ぶ」

「別にとって食ったりしないから、ほら」

そう言って夜久くんが私に手を差し出す。私より一回り以上大きい手に恐る恐る自分の手を乗せる。黒尾くんの手はもっと大きいんだろうな、なんて考えてしまった私は本当にどうかしてしまったのだろうか。

2017/4/15 執筆


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