なんとなく。本当になんとなく思いついただけだった。うちのバレー部には生憎女子マネージャーがいない。その分選手で協力してマネ業を行ってきた。
最近仲良くなった(はずの)白川ちゃんはこっちも驚くほどにビビりで人見知りだった。声をかけただけで肩は跳ねるし、目が合おうものならもの凄いスピードで逸らされる。
それでも懲りずに毎日話しかけたお陰か、最近では声をかけてもあまり驚かなくなったし、目も合うようになってきた。
この調子で他の人とも仲良くすればいいのに、と。おせっかいだとわかっていながら思ってしまった。
「ま、お試しってことで今日の放課後1日体験してみようぜ」
そう言って半ば強引に体育館に連れてきて、何が何だかわかってない白川ちゃんを椅子に座らせていつも通りに練習を始めた。
ビクビクと何かに怯えるような素振りを見せるが、いつもよりキラキラした目で練習を見る白川ちゃんにもしかしたら臨時マネージャーを引き受けてくれるのでは、と思った。
「白川ちゃん!」
「は、はい…っ!」
休憩に入って誰もいなくなったコートを見つめてボーっとする白川ちゃんを呼ぶと勢いよく立ち上がり、体育会系宜しい返事をしてくれた。
思わず吹き出しそうになるのを抑えてクツクツ笑うと、隣で夜久も同じように笑っていた。手招きをしながら白川ちゃんに目を向けると遠くから見てもわかるくらいに顔を真っ青にして立つ姿が見えた。
すぐに駆け寄ろうと思った心に反して、足がピクリとも動かない。こんなの初めてでどうしたらいいのかわからずに立ち尽くしていると隣に立っていた夜久が動いた。
白川ちゃんに手を差し伸べる夜久と、その手を取る白川ちゃんを見てグツリと腹の中で音がした気がした。
2017/4/15 執筆
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