始まりの声は吉か凶か

「突然の連絡ですみません。来てくれてありがとうございます」

「全然気にしないで下さい!それで、お話って言うのは…」

天鵞絨駅近くのカフェ。そこに入ってきたのはMANKAIカンパニー総監督の立花いづみ。いづみを見てぺこりと頭を下げた真緒の向かいの席にいづみが腰を下ろす。

「MANKAIカンパニーさんの公演、拝見させてもらいました。どの組の公演も素晴らしくて感動しました」

「わあ!見てくださったんですね!ありがとうございます!」

「それで本題何ですけど…実は私、作曲家を目指しているんです。それでMANKAIカンパニーの公演をイメージした楽曲を勝手ながら作らせていただきました。ネットの方で楽曲を公表するに当たって許可の方を頂けないかと思い、連絡させてもらったんです」

「そうだったんですね!一度、その曲を聞かせて貰うことってできますか?」

いづみ自身もすぐにOKを出したいところだが、曲によってはMANKAIカンパニーのイメージを落としかねない。恐らくそういった返事が返ってくるのだろうと予想していた真緒がカバンの中からウォークマンを取り出す。

曲を聴くいづみをちらちらと見ながら注文したコーヒーに口をつける。少しして全て曲を聴き終わったいづみが目を輝かせて真緒の手を握った。何事かと目を見開く真緒にいづみが興奮したように口を開いた。

「うちで、MANKAIカンパニーで働きませんか!?」

「え…?」

この言葉が真緒の人生を大きく変える一言になるなんてこの時はまだ誰も知らない。

2017/08/11 執筆

ALICE+