ガツンガツンと、椅子が銅像にあたる音が校長室内に響き渡る。傍から見たらとんでもなくシュールな絵面だ。動いているだけでこちらに攻撃をするわけじゃない銅像は今までと違って対応に困る。如何せん強度が高すぎて全く壊れる様子がない。いっそ背後に回って突き飛ばして倒してやろうかとイライラする私を見て高尾が声を上げて笑う。お前マジでこの椅子でぶん殴ってやろうか。

「え、すごいムカつくんだけど。何なのあいつ」
「投げるより直接ぶん殴った方がいいんじゃないっすかね」
「私もそう思うけどさあ…飛び道具とか仕込まれてたらシャレにならないじゃん?」
「チッ!おい葉月」
「なに?まこちゃん直接攻撃しに行く気?ナイフとか飛んで来たらどうすんのさ」
「ふはっ、心配してくれてんのか?葉月チャン?」
「…なんでもねえよさっさと行け」
「いや口悪すぎでしょ!ぎゃはは!」

投げるより直接攻撃した方がいいのでは、というのは私以外も思っていたようで声を上げた私に高尾が口を開く。けれど前に私が宝箱から飛び出したナイフにやられたようにあの銅像に飛び道具が仕込まれてる可能性も捨てきれない。迂闊に近づけないからこその今の攻撃方法なのだが、しびれをきらしたまこちゃんが口を開く。目を見て、多分直接攻撃に切り替えたいんだろうなと思い、攻撃の手を止める。私とまこちゃんの行動の意図を察して高尾と緑間も攻撃の手を止める。

「花宮さんマジ悪役みたいな顔してる!」
「人一人殺してきたような目だね」
「殺すって言うか、今からあの銅像壊すんですけどね」
「まあ、あの顔で椅子振りかぶってたら殺人鬼だよねえ」
「ひゃー!すっげえ音!」
「仕留めた、のか…?」
「あ、緑間ストップ。邪魔だから下がってて」
「しーんちゃん、大人しく下がってた方がいいぜ〜」

椅子を片手に銅像の背後に回るまこちゃんを見ながら高尾と会話をする。苛立っているせいで悪そうな顔に磨きがかかって悪い顔になってるまこちゃんを見て二人で声を押し殺して笑う。まこちゃんは私たちにうるせえ黙れとでも言いたげな視線を一瞬向けた後、フルスイングで銅像を背後から殴り倒した。もの凄い音と共に銅像が倒れて、床に破片が散らばる。近づこうとした緑間を止めて、少し離れた場所で銅像の様子を窺う。

「…鍵は?」
「多分この中だな」
「だと思った!これ叩き割るとか至難すぎるでしょ」
「うだうだ言ってねえでやれ」
「はいはい。高尾、手伝え」
「人使い荒すぎ!ぎゃはは!」
「うるせえな。黙ってやれって言ってんだろ」
「二人ともひどい!」

もし倒しているとすれば鍵が現れるはず。それなのに鍵が現れないということは完全に倒しきれてないという事だ。私の呟きに苛立たし気に返したまこちゃんのことばにため息をついた後、高尾を連れて銅像を壊しに行く。どれだけ適当な扱いを受けていようがゲラゲラ笑っている高尾にさすがのまこちゃんも引いたような目を向けている。一哉も割と高尾と似たようなところがあるけれど、高尾ほどゲラじゃない。

何度か殴り続けるとガシャンと大きな音がして銅像が壊れて、中から鍵が現れる。予想通り鍵を入手するためには銅像の破壊が必須だったようだ。今までとは違った意味でものすごく疲れた。完全に私とまこちゃんが来るべき場所ではなかったとひしひし感じている。これは確実に脳筋野郎達が来るべき場所だった。ウチで言ったら一哉とザキが来るべきだった、絶対に私とまこちゃんが来るべき場所ではない。わざとらしくため息をつけば、同じ世にまこちゃんもため息をついていて、おそらく考えていることは同じだろうなともう一度ため息をついた。

「あと二階は放送室だけか…どうする?戻る?それともこのまま行く?」
「いや、一度戻る」
「ふうん。何考えてんの」
「お前が考えてることと変わんねえよ」
「あっそ」
「えっ、何すか何考えてるんですか」
「ほんとにわかんないの…?」
「いやまあ何となくは分かりますけど、一応確認みたいな?」

ようやく終わりに近づいてきた二階探索に小さく息を吐く。恐らく放送室で起きる出来事は面倒だった二階探索の中でも更に面倒なものになることは何となく感じていた。それは私だけに限ったことではなくてまこちゃんも同じ王に放送室探索にはそれ相応のメンバーで行くことを考えていたのだろう。言葉にはしてなくても互いの言いたいことを理解して納得しあっている私とまこちゃんに高尾が首を傾げながら寄ってくる。バカじゃないどころか頭の回転は比較的早い方の高尾がこの程度に気づけないのかとジト目で見ればヘラリと笑ってみせた高尾に小さくため息を吐いて口を開いた。


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