「蘭ちゃん、お待たせ」
「なまえちゃん!」
「あれ?園子ちゃんは?」
「寝坊したから10分待って!だって」
「あはは、園子ちゃんらしい」

久しぶりに皆で出かけよう、という話になり女の子三人でショッピングに行くことになった。待ち合わせ場所に来てみればいるのは蘭ちゃんだけ。時間ギリギリになっちゃったから二人共揃ってると思ってたんだけど、と思って話を聞けば園子ちゃんは寝坊らしい。蘭ちゃんと近くのベンチに座って話をして待っていれば園子ちゃんが走ってやってくる。

「ごめーん!寝坊しちゃって!」
「そんなに急がなくてもよかったのに」
「だって久しぶりになまえさんと出掛けるから楽しみで眠れなくて…」
「わ、嬉しいこと言ってくれるなあ。私も二人と遊ぶのすっごく楽しみにしてたんだ」

二人共小さい頃から面倒を見てるせいで本当に妹のような存在だから、慕ってくれるのはすごく嬉しいし可愛くてしょうがない。いつも甘やかしてお菓子買ってあげたりするから「甘やかさないの!」ってよく怒られたっけ。なんて思いながら久しぶりだし一着くらい洋服買ってあげようなんて思ってる私も懲りないよね。

「どうする?先にお昼食べちゃう?」
「んー…どうしよっか」
「この後だと混んじゃうかもだし、先に食べちゃおうよ!」
「そうだね、そうしよっか」
「決まり!どこ行く?」
「最近出来たオムライスの専門店とかどう?同僚が凄く美味しいって言ってたから行ってみない?」
「わ!行きたい!蘭!そこにしようよ!」
「うん!私もそこがいい」
「決まりね。じゃあ、いこっか」

時間は10時半。お昼には少し早いけど、どこのお店もお昼時はかなり混雑する。お昼時を避けるなら早めに食べるか遅めにするかの二択だ。買い物始めたらそっちに夢中になっちゃう二人のことだから先にお昼を食べた方がいいだろう。

同僚が、とは言ったものの新しくできる店が何かの組織が紛れ込むために作ったものだとかそういう危ない店じゃないかを調べたからその店を知ってるってだけなんだけど。実際に店に来てみれば写真で見るよりずっと明るい印象を受ける店だった。店の人も愛想が良く、これで演技だったらマカデミー賞ものだ。

「ほんとにオムライスしかないんだね」
「さすが専門店!初めて見るのばっかり」
「どれも美味しそうだね」
「んー悩むー!」
「私はこれにしようかな」
「新しいお店にくるとなまえちゃん、いつもオススメ注文するよね」
「だって、美味しそうじゃない?」
「そうだけど、もっとこう…冒険心と言うか!」
「あはは。蘭ちゃんと園子ちゃんが冒険してくれるから私はそれにあやかろうかなって」
「さっすが、大人の女はずるいわね」
「あら。賢い、の間違いでしょ?」

三人でクスクス笑いながらそれぞれメニューを決める。私はデミグラスソースのオムライスで、蘭ちゃんは海鮮クリームソースのオムライス、園子ちゃんは季節野菜とクリームソースのオムライス。運ばれてきた料理を写真に撮って、食べる。ふわふわの卵とソースが最高の組み合わせで思わず頬が緩む。

「美味しいね」
「はい!なまえさん!一口あげる」
「ありがとう!ん、んー!美味しい!」
「でっしょー?ほら!蘭も!」
「ん。…ほんとだ!美味しい!」
「私のも一口あげる」

二人のオムライスも一口もらって食べる。どれも美味くて、今度はママ達も連れてこようと思った。お昼ご飯も食べ終わって、目的のショッピングに繰り出す。ここからはもう女の子の独壇場。あーでもないこーでもない、と洋服を選ぶこと数時間。絶対新一なら飽きて読書始めちゃうんだろうな、なんて思いながら二人に似合いそうな服を探す。

「うん。なまえさん!これ着てみて!」
「私が…?これを…?」
「ぜーったい似合うから!」

そう言って園子ちゃんに渡されたのは青いフイッシュテールワンピース。どちらかと言うとドレスなんじゃ…と思いながら試着室に入って着替える。鏡に映った自分を見て似合わないな、と苦笑い。カーテンを開けて外にいる二人に姿を見せればきゃあきゃあとはしゃいでいる。

「すっごい似合う!」
「さすが大人の女、って感じね」
「ほんとに?何か変じゃない?」
「ううん!すごく似合ってる!」
「買っちゃいなよ!値段もそんなに高くないし!」
「うーん…じゃあ買っちゃおうかな…」
「よし!決まり!今度は蘭の服選ぶわよ!」
「わっ、園子!?」
「ほら、行った行った!」

私がこの服を買うことを決めたと言った瞬間もう一度店内を見て歩き出した園子ちゃんにクスクスと笑って試着室に戻る。最近仕事ばかりでゆっくり買い物できてなかったからたまにはこういうのもいいな。さっきから鳴りっぱなしの仕事用スマートフォンさえなければ、なんだけど。

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