「で?蘭ちゃんと一つ屋根の下な訳だけど、進展は?」
「ある訳ねえだろ」
「だよねえ。新一ヘタレだからね」
「ヘタレじゃねえし、この状況で進展すると思ってんのか?」

家のソファに座ってコーヒーを飲みながら新一と会話する。蘭ちゃんの所に居候してるはずの新一はかなりの頻度でこっちに来てる。二回目の小学校生活も楽しくやっているようだ。本人は楽しくねえよ、と言ってるけど。最近は転校生が来たみたいで何やら毎日楽しそうだ。おそらく哀ちゃんのことだろうけど。

「で?その転校生ちゃんって女の子なんでしょ?可愛いの?」
「…知らね」
「蘭ちゃんにしか興味ない奴に聞いた私が馬鹿でした」
「なっ…!だから蘭はそういうのじゃねえって…!」
「そういうのって?」

私の言葉に顔を赤くする新一を見てけらけら笑う。どうにも私は新一を揶揄うのが大好きのようだ。蘭ちゃんのことになると名探偵も冷静さを失ってしまうようで。そんなんじゃホームズには程遠いぞ、と言うとうるせえ、とそっぽを向かれてしまった。あら、揶揄い過ぎちゃったかな?

「そうだ。パパとママにちっちゃくなったこと言ったの?」
「言ってねえよ」
「こっちに帰ってきた時どうやって誤魔化すの?」
「父さんと母さん帰ってくんのかよ!?」
「もしも、の話。口裏合わせるなら準備しとくに越したことないでしょ」
「友達の家に泊まってるってことにすればいいだろ」
「あ、そんなんでいいの?」
「母さんの事だから、ふらっと帰ってきて適当に遊んで帰るんだからいいだろ」
「まあ…確かに…」

至極面倒くさそうな顔でコーヒーを啜る新一は小さいけれど、新一そのものだった。よくそれでバレないわね。クッキーを一枚齧りながら新一の様子を見る。時折スマホを見て微妙な顔をしてるから、多分小学校の友達から連絡でもきてるんだろう。子供は外で元気よく遊べばいいのに。ま、小学校だろうと高校生だろうと私からしたら子供だからなあ。

「アイツらに呼ばれたから行ってくる。コーヒー、ありがとな」
「はいはい。気を付けてね」
「おー。また後で連絡する」
「はーい。またね」

ぴょんっとソファから飛び降りる新一の言葉にやっぱり、と思う。自分のカップと新一が使っていたカップをお盆に乗せて、クッキーが入っていた箱に蓋をする。駆け足で家から出て行った新一を見送って片付けをする。部屋からパソコンを持ってきて電源を付け、ソファに座り直す。

「さーて、仕事しますか」

届いているメールは三つ。一つずつ開けて内容を確認して、該当するデータを探して打ち込んでいく。単純そうに見えるけど膨大な情報の中からピックアップする作業は普通の人じゃかなり難しい。この分だと夜までかかるな、と小さくため息をついてパソコンに向き直った。

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