「おかえり!あだなちゃん!」
「わっ!ママ!?」
「益々美人さんになっちゃって〜!」
「苦しいよ、ママ」
「おかえり、なまえ」
「ただいま。パパとママもおかえり」

いつも通り仕事を終えて家に帰ると電気が付いていた。新一が来てるのだと思って家に入れば私に抱きついてきたのはママだった。帰ってくるなんて連絡は一切なかったけど二人のことだからびっくりさせようと思って、とかそんな感じの理由なんだろう。

「あだなちゃん、新ちゃんは?」
「新一なら友達の家に泊まりに行ってるよ」
「ええー!せっかく帰ってきたのにー!」
「おや、有希子はなまえだけじゃ不満という訳か」
「ひどーい!パパー!ママがいじめるー!」
「もう!優作!あだなちゃんまで!」
「はは、冗談だよ」

キョロキョロと何かを探し始めたママに聞かれたのは予想通りの質問。前もって新一と口裏合わせといてよかったかも、と思いながら決めていた事を口にする。新一がいないことに不満げな声を漏らすママをパパが揶揄う。私もそれに乗っかればママが頬を膨らませて怒る。クスクス笑う私とパパにママも釣られるように笑う。

久しぶりにママの料理を食べて、パパと話をした。やっぱり一人暮らしより家族と暮らす方が楽しいし幸せだなあ、なんて思いながらベッドに入って眠った。次の日起きたらパパとママと博士が三人で何かを話してた。話を聞けば新一にちょっとしたイタズラを仕掛けるらしい。

「…新一に怒られても知らないからね」
「えー!?あだなちゃんもやるでしょ?」
「やらないよ。だって新一怒ると面倒なんだもん」
「もー!折角あだなちゃんの分も変装道具準備したのにー!」

ぷんすこ怒るママは実年齢よりずっと若く見える。なんなら若返ってるんじゃないかと心配になるくらいには美人だ。それなのに、こんなおばさんに変装するなんて。勿体ないなあ…。それにパパの変装はまんま闇男爵。それ、新一にバレちゃうんじゃないの?

「イタズラもスケールが違うね。随分手が込んでる」
「下手な芝居じゃ新一には気づかれてしまうからね」
「…その変装も中々危ないと思うけど」

早く焦る新ちゃんが見たーい!とはしゃぐママは相変わらず、良い性格をしている。頑張って〜とヒラヒラ手を振って仕事部屋に向かう。

「ま、せいぜい頑張って正体見抜けたらいいわね。名探偵さん」

実の両親とその友人にかなりの恐怖を与えられるであろう弟の姿を思い浮かべて思わず苦笑い。後で愚痴はいっぱい聞いてあげようと思う。頑張れ、名探偵。

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