「告白されたの?」
「うん。3年の先輩に」
「振ったんだろ?」
「よく分かったね」
「彼氏が出来た面には見えねえからな」

いつもファミレスでご飯を食べながら今日の出来事を話す。もはや恒例行事になりつつあるこの状況に最近は一切違和感がなくなってきた。一日の出来事、と言っても私自身は友達がいるわけじゃないから特に面白い話はないし、松田さんと萩原さんも警察の人だから事件のことについては話せない。

じゃあ何を話してるんだって感じだけど意外と3人で話していると話題が尽きない。ただ、今日だけはいつもと違っていて、私の変わらないはずの学校生活が少し変化した。冒頭にも出てきたとおり、告白されたのだ。それも校内で人気NO.1の先輩に。噂によれば顔良し、運動神経良し、頭良し、性格良しの完璧人間らしい。

「なんて言われたの?」
「入学式の時に見かけてずっと可愛いなって思ってたんだけど、俺と付き合わない?って言われたから嫌ですって言って帰ってきた」
「こめんなさいとかじゃなくて嫌ですって言っちゃったのか」
「だって俺の告白振るわけないよね?みたいな言い方でムカついたから」
「そういうとこ子供っぽいよな、お前」
「今は子供だからいいでしょ」

私の告白に対する返事に萩原さんは腹を抱えてひいひい笑ってて、松田さんも肩を震わせて笑っていた。だってどうしても俺と付き合わない?の後ろで「この俺が告白してるんだから勿論OKだよね?」って副音声が聞こえた気がして割と普通に気持ち悪かった。キモい無理とか口走らなくてよかった。

松田さんと萩原さんは私が実は元大学生だと分かってから扱いが高校生に対するものじゃなくなった。同僚とかに接するような感じになって、今まであった壁がなくなった感じがする。まあ、その分お互いの扱いがものすごく雑になっているのは否めないのだけど、それもまた心地が良くて甘えてる自分がいる。

「でもそんな振り方して大丈夫?」
「どういうこと?」
「ほら、その男の子人気なんでしょ?」
「ああ、そういうこと。別に平気でしょ。高校生のすることなんてたかが知れてるし、もし警察沙汰になりそうだったら真っ先に2人に連絡するから大丈夫」

不安げな萩原さんの言葉に確かに、と思う。彼の口調からして、彼は告白が絶対に成功するものだと思っていただろう。友人にも告白することを漏らしていた可能性は高い。それなのに結果は予想とは正反対のものになった。それも、ごめんなさいとかじゃなく「嫌です」と言う拒絶の言葉によるもの。

結果を嬉嬉として待っていた友人達に彼は失敗したと報告をするしかないだろうが拒絶されたとなれば彼のプライドは大いに傷つくことだろう。それを防ぐために彼が友人達にどんな報告をするかは全く予想がつかない。が、私が彼からの告白を蹴ったことはたちまち学校中の噂になる。

「ならいいんだけど…あんまり挑発はしないでよ?」
「…善処する」
「絶対しねえだろ、それ」
「ほんとに頼むよ…なまえちゃん…」
「むしろ、いじめとか受けたことないから受けてみたい」
「目ェ輝かせんな」
「いてっ」

高校生だし善悪の区別はついているだろう。さすがに警察沙汰になるようなことには発展しないと思う。まあ、仮になったとしてもおまわりさんと言う心強い味方が2人もいるから大丈夫。むしろ、最近の高校生のいじめがどんなものなのか気になるくらいだ、と言って笑えば松田さんのデコピンが額を襲った。痛かった。

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