薄暗い道を足早に歩く。薄暗い上に人通りも少ないこの道はどこか不気味な雰囲気があってあまり好きじゃない。ぎゅっと鞄の持ち手を握りしめて歩いていると後ろからガヤガヤと賑やかな声が聞こえてきた。珍しいな、なんて呑気なことを考えていると、その声が真後ろから聞こえた。

「ねえ、オネーサンひとり〜?」

肩を掴まれ、ぐっと引かれる。ヒールの靴を履いた足では踏ん張れずにぐらりと体が後ろに倒れる。どん、とぶつかったのは声をかけてきた男の体で。肩に置かれていた手が私の腕に移動して、ぐっと掴まれる。

「あ、の。離してください」
「え〜どうしよっかな〜」
「警察、呼びますよ」

私の腕を掴む男を睨むけれどニヤニヤと笑っていて全く効果がなさそうだ。周りの男達もニヤニヤと笑っていて嫌な予感がする。人数は全部で5人。完璧に分が悪い。逃げようにも腕を掴まれてるしこの靴じゃ走ってもすぐ追いつかれる。ただでさえ人通りの少ないこの道じゃ、誰かが助けてくれる可能性も低い。

「い、急いでるので…!離して、ください!」
「だいじょーぶだって。イタイことはしたいからさ」
「ぎゃははは!何がイタイことはしないだよ!」
「うわー、サイテー!ぎゃははは!」

ゲラゲラ笑う男達に苛立ちが込み上げてくる。掴まれている手を振り払った時、私の手が男の手を弾く。パシン、と乾いた音が響いて男達の声がぴたりと止む。ぴりりと空気が変わって、やばいと本能的に感じて足を一歩後ろに引く。けれど、さっき掴まれていたよりも強い力で腕を掴まれる。私の腕をつかむ男の眉間にはシワがよっていて、周りの男達はさっきとは違う笑みを浮かべていた。

「ねえ、オネーサンのせいで俺の手、怪我しちゃったんだけど?」
「…っ、離して!」
「離すわけないでしょ〜」
「やだ…っ!」

ぐいぐいと引かれる手は振り払えないし、力の差は歴然で徐々に体が引きずられる。じわりと目に涙が滲むけど、泣くものかとぐっと堪えて男達を睨みつける。腕を掴むだけに留まらず、肩や腰にも腕が回る。あまりの嫌悪感に吐き気が込み上げてきて、さらに涙が滲む。路地に引きずり込まれそうになった時、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。


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