学校からの帰り道。どうせ基地に向かうんだから、と荒船と梓は一緒に歩いていた。



「荒船!見て!犬!」
荒「っ!」
「荒船?」
荒「…なんだよ」
「どうしたの?」
荒「なんでもねぇ」



めずらしく歯切れの悪い荒船に梓は首を傾げた。その後も何気ない会話をしながら、基地まで残り数百メートルほどになった時正面にそれは現れた。



「っ!わんこだー!」
荒「!!」
「わー!かわいいー!触っていいですか?」
「ふふ、いいですよ」
「ありがとうござ、うわっ!くすぐったい、!」



人懐っこい犬は梓の顔をペロリと舐めた。それを見て、ビシリと音がつきそうな勢いで固まる荒船。勿論、犬に夢中の梓は全く気づいていない。



「かわいいなあ!もう!」
「よかったわね、遊んでもらえて」
「ワンッ!」
荒「っ!」



名残惜しく思いながらも犬と別れ再度歩き出す荒船と梓。期限の良さそうな梓に対して、未だに若干固まったままの荒船。そんな荒船に梓は一つの仮説を思いついた。



「荒船、もしかしなくても犬ダメ?」
荒「な、っ!ダメなわけじゃ、ねぇよ!違ぇよ!」



必死に誤魔化そうとする荒船の姿に梓が声を上げて笑った。



「くっ…ぶはっ!」
「何笑ってんだよ」
「そういうことにしておいてあげる!」



そう言って笑顔で言った梓に荒船は嫌な予感を感じ、頬を引き攣らせた。それから少しして、穂刈から梓に荒船が犬が苦手である事が伝えられ、荒船がからかわれるのはまた別のお話。


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