「カゲくん!」
影「抱きつくんじゃねぇよ」



そう言って梓を引き剥がす影浦。にも関わらず懲りずに抱きつく梓に影浦は大きなため息をついた。



影「っ、」
「カゲくん?」
影「チッ、なんでもねぇ」



微かに反応を示した影浦に梓はあぁ、またかと思った。『感情受信体質』それが影浦のサイドエフェクトだ。周りの人間の感情を察知することができ、それが負の感情であればあるほど不快に感じるという便利なのかそうでないのかわからないものである。


影浦がこうして何もない時に反応を示す、ということはまた誰かが影浦の陰口を言っているのだろうと梓は察した。



「カゲくんカゲくん」
影「あ?なん、!?」



おもむろに影浦の名前を呼んだ梓は影浦の頬に触れるだけのキスをした。



影「なにしてんだ、てめぇ」
「痛くないでしょ?」
影「あ?」



誰かの負の感情が刺さるのなら、自分の正の感情をぶつければいい。梓はそう考えたのだ。実際、影浦に先程まで刺さっていた痛みはなくなったわけではないが確かに和らいでいた。



影「チッ、」
「カゲく、んむっ」



舌打ちをする影浦に心配そうな表情を浮かべて顔を除き込んだ梓の頬をつかみ影浦はキスをした。梓の感情がむず痒かったのだろう、耳が少し赤くなっている。



「ん、ふっ…かげ、く…んっ…」
影「黙ってろ」



影浦の服の裾をつかみ目をギュッと瞑る梓に柄にもなく可愛い、などと思ってしまった影浦は梓の唇にまた噛み付いた。


ALICE+