※夢主いません

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廃棄区画内を原と瀬戸の後ろを着いて歩く黒子はどうしたらいいのか分からず内心頭を抱えていた。初めての事件で、いきなり執行官を2人も任されるとは思っていなかったし、ましてや実際の人をドミネーターで撃つのも初めてだ。そもそも、前を歩く2人とまともに会話をしている訳でもないし、仲が良い訳でもない。黒子が意を決して2人に話しかけようと口を開いた瞬間古橋の声が耳に響く。

『こちらハウンド2、対象発見。どうする?』
『場所は』
『Cビル3階、一番奥の部屋だ』

対象発見の言葉に一気に空気が変わる。さっきまでやる気のなさそうだった原と瀬戸の雰囲気もガラリと変わっていて圧倒される。1人で仕留められるか、と問う花宮に古橋がまあ大丈夫だろう、なんて軽く返す。まあ大丈夫、でいいのかと黒子が感じた不安は大当たりだった。少しして、古橋の声が再度耳に響く。

『すまない。取り逃がした』
『はあ!?何やってんだ!』
『パラライザーが効かなかった。恐らくクスリだ』
『チッ…!めんどくせえな』

珍しく焦ってるね、と原が笑いながら話す。正直、古橋がここで対象を仕留めてくれればと思っていた黒子にとって、対象の逃亡は胃が痛りそうな言葉だった。その時、思考を巡らせる黒子と全く焦る様子のない原と瀬戸が歩いてた路地の先に対象の姿が見えた。

その瞬間走り出す原と瀬戸に一拍遅れて黒子も走り出す。こちらの存在に気づいた犯人がこちらを向いて声を荒らげる。手に持っている大きなガラスの破片は廃棄区画内に落ちていたものを拾ったのだろう。人質の首に破片を突き立てて銃を捨てろと喚く対象に大人しく黒子がドミネーターを床に下ろそうとした時だった。

「はあ?捨てるわけないじゃん。バッカじゃないの?」
「なっ…!この女がどうなってもいいのか!」
「別に?だって、あんたら2人とも死ぬんだから関係なくね?」
「う、うわああああ!」

対象と人質にドミネーターの銃口を向ける原と瀬戸に黒子が言葉を失う。ニヤリと愉しそうに笑って原が引き金を引く。対象の体がぶわりと膨れ上がり、血飛沫が辺りを真っ赤に染める。今まで自分を捕まえていた人間が突然肉塊に変わったことに悲鳴をあげる人質に慌てて黒子が近づく。

「大丈夫ですか!」
「いや!来ないで!」
「落ち着いてください!貴女を助けに来たんです!」
「無駄無駄、その女もう手遅れだから」
「だとしても彼女は被害者です!」
「チッ、いいからどけっつーの」

自身を助けに来た公安を見て、来るなと喚く女に黒子が優しい口調で話しかける。女の犯罪係数は326で、もうこの世にはいらない人間だと判定された。原がその事実を伝えても引き下がろうとしない黒子に原が舌打ちをする。女を庇うように女の前に立つ黒子を無理やり退かして、引き金を引く。黒子の視界一面が赤に染まり、鉄の臭いが鼻を刺激する。

「ハウンド3、執行完了*」
「なんで…なんで彼女を撃ったんですか!?」
「はあ?寝言は寝てから言えよ。つーか、これが俺達のオシゴトなんだよ。嫌なら辞めれば?」
「っ…!」

原の行動に納得がいかない黒子が声を荒らげる。その途端、原の空気が豹変する。黒子を見下ろしながら嘲笑うように言葉を吐き捨てる原と咄嗟に返す言葉が浮かばずに口を噤む黒子。それを離れた場所で見ていた花宮が全てを見透かしていたかのようにニヤリと笑った。


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