安室透名義の家に突如として現れた魔女を名乗る女と同居する降谷零の話。ちょっと(?)暗め

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ある日突然僕の家に現れたのは魔女を名乗る女だった。名前は名前、性別は女、年齢は453歳、職業は魔女。分かっていることはこれだけ。どれだけ調べてもこの女についての詳細は出てこないし、この女も何も教えてくれない。そして何故か僕の正体を知っている。

「…いつまでここにいるつもりですか」
「え〜?そりゃあ、君が死ぬまでだよ」
「…そういう意味じゃないんですけど。さっさと出ていってもらえますか」
「そんな冷たい事言わないでよ。君に迷惑かけてないんだからいいじゃない」

彼女が人差し指を一振りすればふよふよとキッチンのマグカップが浮き、勝手にコーヒーを入れ始める。そのままふよふよと彼女の手の中に収まったマグカップを見て目を丸くしたのは少し前のこと。今では見慣れた光景だ。

そして、僕が彼女を魔女であると信じた何よりもの要因だった。マグカップが浮いて移動するなんてまず現実的に考えて有り得ない。他にも人差し指を振るだけで机の上に料理が並んだり、部屋の中が綺麗に片付いたりする。正直、忙しくて家に帰れない時には助かっているがそれとこれとは別問題だ。

「ねえ、知ってる?魔女にとって人間に恋をするのって愚かなことなのよ」
「それが何か?」
「魔女が人間と肉体的な関わりを持つことは侵してはいけない禁忌なの。だから、貴方が死ぬまで貴方の傍にいさせて」

口を開いた彼女の表情はどこか遠くを見つめていて。その憂いを帯びた表情に目を奪われたのは一瞬のことだった。彼女の瞳が僕を捉えてふにゃり、と歪む。大事な人を、ものを、全て失った俺と同じ目をする彼女から目が離せなかった。


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